第仇夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「ん、せやけど、意識っていうか主導権は小袖ちゃんにあるん?」

小袖の手「ぼそぼそ(あ、はい……どうやら私の霊力が一番強かったようなの)」

メリー「また声が小さくなってる」

クロ「その声の小ささは何なんだ」

小袖の手「ぽそぽそ(すいません、私はもともと喋ったりする妖ではなかったので慣れてなくて……)」

福太郎「んー、なるほど。手だけの妖怪やもんな」

小袖の手「ぽそぽそ(あの、厚かましいお願いなのですがコートか何かをお貸しくださいませんか?)」

福太郎「コート?えーと、ジャケットでもええ?」

小袖の手「はい」

福太郎「ほんなら、はい」

スッ
ぬるぅっ!

お仙『お、手が出てきタ』

小袖の手「すいません、ようやく落ち着きました」

クロ「手を出せたら何でもいいのかよ」

小袖の手「本当は高価な和羽織などがいいのですが…」

お仙『贅沢だナ』

小袖の手「ご、ごめんなさい、すいません、……」

お仙『おう、気にするナ』

クロ「偉そうにするな」
ごんっ!
お仙『やーらーれーター』

福太郎「んっ、あれ?小袖ちゃん服着とるんやったよな?」

小袖の手「着ているというか、私にくっついた浮遊霊さんが着ていたものなので……なんといったらいいんでしょうか、パーツとしてくっついている感じなんです」

福太郎「んーと、つまり……絵で描いたらこういう感じ?」
ササッ、サササッ……

小袖の手「あ、そうです。お上手ですね。」

福太郎「ただの落書きやって。んー、でも透明なんやな」

小袖の手「はい、霊力が少々あるといっても、私はもともとこうして袖から伸ばした手を実体化させるのが能力なんです。ですから、多分他の部位を実体化させるのはすぐにはできないかと……」

福太郎「なるほど、ほんなら……落ち着いてきたところで、なんでうちに来たん?その様子からして歩いたりするんはまた慣れてやないんやろ?」

小袖の手「はい……。実は噂で聞いたんです」

福太郎「噂?」

小袖の手「歪業で優秀な方だとお聞きしました。」

福太郎「んー、優秀かなぁ」

小袖の手「それで勝手なお願いなのですが……私の小袖を探してもらえませんでしょうか」

福太郎「小袖って袖口の狭い高級な和服やんな」

小袖の手「はい」

福太郎「……もしかして、どっかの卸問屋でたっかい服を買うて来いと?」

小袖の手「ち、違います。欲しいのは霊力のこもった小袖なんです。小袖でなくても構わないのです。強い霊力のこもった衣類が欲しいのです。」

福太郎「んー……ええよ」

クロ「軽っ!」

小袖の手「本当ですか!」

福太郎「んっ、服探すぐらいならええやろ。」

お仙『福太郎の服ハ?』

小袖の手「できれば女ものがいいです…」
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