第仇夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋:二階の部屋ー

冥「こちらの部屋になりますナ」
ガチャ
悠「やーん、のび太さんのエッチー!」

冥「はいはい、退いた退いたナ」

ろくろっ首「こっちはフローリングなんやな」

抜け首「しかもバリアフリーやん」

悠「……」

福太郎「敗因は風呂場でやらんかったことちゃうかな」

悠「それだ!」

抜け首「っていうか、どやって入ったんや」

悠「服ちゃんの部屋からベランダを伝ってきた」

ろくろっ首「ここのマンション防犯がばがば?」

冥「そんなことないですナ!悠ちゃんがおかしいだけですナ!」

悠「へへっ。」

抜け首「褒められとらんちゅうねん!」

福太郎「ってか、この部屋……豪華やな。エアコンもまだ新しそうなんがついとるし」

冥「それには理由がありますナ」

悠「週刊ドボルザークを愛読しているからです」

ろくろっ首「ドボルザーク?!」

抜け首「しかも毎週ドボルザーク?!」

福太郎「ドボルザークってなに?」

悠「交響曲第9番ホ短調作品95」

冥「まったく関係ないから黙ってるナ!」
バリっ!バリッ!
悠「くろすかっと!」

福太郎「顔がマス目」

ろくろっ首「抜けちゃん、○×しよ~」

抜け首「おっけー」

悠「オッケーじゃないよ!」

福太郎「ほんで理由いうんは?」

冥「工事ミスですナ」

悠「麹味噌……」

冥「……」
サクッ
悠「爪!!」

福太郎「工事ミスっていうんは?」

冥「本当はフローリングにするお部屋とエアコンを着けるお部屋が別々だったんですけど、業者が間違えてこの部屋だけにしちゃったのナ」

悠「とんでもないな」

冥「そんなとんでもない人も今では立派な大工の頭になってますナ」

福太郎「へー」

抜け首「この部屋綺麗やしええやん。ろくちゃんどう?」

ろくろっ首「わたしもええよ~」

悠「この部屋は不思議なダンジョンとかないの?」
ダラダラ

福太郎「悠、クロスカットと突き立てられた出血がすごいよ」

冥「この部屋にはとくに何もないですナ。あ…」

福太郎「あ?」

悠「い、う、えーどりあぁぁぁん!」

冥「……」

ろくろっ首「……」

抜け首「……」

悠「よっしゃ大爆笑!!」

福太郎「悠にはどっからか歓声が聞こえ都丸っぽいな」

抜け首「明らかに危ない薬しとるやろ」

悠「薬なら毎日飲んでるよ!七色のやつ!」

福太郎「ヒラコーが飲んどるやつか…」

ろくろっ首「ほんで何があるんです?」

冥「大したことじゃないですナ。ただ、あれですナ」

福太郎「あれ?」

悠「ウッドチェアー?」

冥「あのウッドチェアーは誰も座ってないのに揺れたり。ふとみたら勝手に向きが変わってたりするのナ」

悠「それ明らかに何かいないか?」

冥「浮遊霊の可能性が大ですナ」

悠「1DK浮遊霊つき、隙間女つき、不思議なダンジョンつき……こうなってきたらほかの部屋もきになるな」
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