第捌夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「せやけど、ひとり旅って大変ちゃいます?」

揺光【妾の式も居るしひとりではないぞ。それに旅先では何かしら色んなものに出あうしの】

メリー「なんか楽しそう」

揺光【ちょっとした娯楽じゃからな】

クロ「ちょっとではないよけ。だいだい的だよ…」

福太郎「ほんなら今回は何で帰ってきたんです?」

揺光【悠の顔を見にの。たまにあってやらねば泣くじゃろうから】

クロ「泣くようなたまじゃないだろ……アレ。」

揺光【まぁ、そうなんじゃがな。夏が近づくと怪談の時期じゃから妾が居る方が便利じゃろ】

クロ「何にだよ」

揺光【幽霊を捕まえて、瓶に詰めるんじゃ】

すっきー『な、なんの意味があるんすかそれ?』

揺光【知らんのか?幽霊は冷房がわりになるんじゃぞ。】

福太郎「……チラッ」

すっきー『ちょ、何見てるっスか?』

揺光【まぁ、捕える霊を間違えたりしたら怨みが強過ぎて、霊症にかかる可能性があるがの……。】

福太郎「幽霊の扱いも注意せなアカンってことですね。」

クロ「そもそも瓶詰めにしたりするもんじゃないし…」

揺光【別に入れ物は何でも善いんじゃがな。例えば人形とか……】

メリー「……」

福太郎「メリーちゃん仲間が増やせるとか考えとらん?」

メリー「かっ、んがえてないよー」

クロ「声が上ずってるぞ」

揺光【なんじゃ、人形仲間が欲しいのなら妾にいわんか。ほれ、これとかどうじゃ】
ズズッ

不自然に髪の伸びた人形

メリー「……いらない」

福太郎「めっちゃ呪われてますやん」

揺光【なんでも不幸を呼ぶとかいう曰くつきのものでの。神社でも手に負えんとのことで妾が預かることにしたんじゃ】
スッ

クロ「そんなもん預かってどうするんだ」

揺光【たまーに、この手の類を買い取る好き者が居るんじゃ。】

福太郎「コレクター?」

揺光【収集癖なのかも知れんし。呪具や依りしろとしても使える】

福太郎「濃いぃ~……呪いが発動しそうですね。」

揺光【よっぽどの術者でなければ逆に呪い返しを受けて破滅するじゃろうな……んっ。】

福太郎「どないかしました?」

揺光【すまん、ちと咽が乾いた。何か貰えんか?】

福太郎「んっ、気が利かんで申しわけないです。なんがええです?」

揺光【冷たい茶はあるかえ?】

福太郎「有りますけど……お酒やなーてええんですか?」

揺光【あぁ、構わんよ。昼間から呑む酒も善いが、最近は夜だけ呑むことにしておる】

福太郎「なんでですの?」

揺光【日中我慢し溜めに溜めて一気に発散する楽しみ方じゃ】

福太郎「ああ、湯あがりのビール的な」

揺光【そうじゃ。まぁ、数日酒を絶つなどの真似はせんがな。そうなるとただの苦痛じゃ】

クロ「アル中かよ…」

揺光【どこぞの狸と同じ扱いはやめい。妾は身体を壊すような暴食暴飲はせん。】

福太郎「そもそも身体を悪うなったりするんすか?」

揺光【いや、全然】
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