第捌夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

クロ「ふあぁぁ……ぁー。寝不足だ」

福太郎「結帰るギリギリのギリまで騒いでたもんな」

クロ「まったくだ、あの鬼め……」

福太郎「まぁ、暴れられんで良かったゃん」

クロ「お前のそれはプラス思考なのか何なのか」

コンコン…

福太郎「ん?はい?」

綺麗な女性「おったか」

福太郎「はて……どちらさまで?」

綺麗な女性「ん?ああ、妾じゃ」
ポンッ!

福太郎「んっ、揺光さんでしたか」

揺光【近くをふらふらしていての、ついでじゃから寄ってみた】

福太郎「そうですか。良かったらどうぞ」

揺光【うむ、邪魔させてもらおう】

クロ「あ……」

揺光【久しいの】

クロ「あ、えと、はい、お久しぶりです……」

揺光【そんなに硬くならずとも良い。普段通りでの。こんこん♪】

お仙『お、なんだなんダ。色っぽい人だナ。』

揺光【ほう、これは面白い。動く死体かえ?】

福太郎「キョンシーです。お仙、こちら九尾の狐の揺光さん」

お仙『御堂(笠森)お仙、キョンシーダ!』

揺光【ほほう、ほうほう】

お仙『いやン』

福太郎「気になります?」

揺光【うむ、死者蘇生ではなく、死者を動かす術は大抵近くに従者がいて操るもんなのじゃが。こやつは独自で動いてておる。興味深い】

福太郎「キョンシー化が大得意な道士さんが施術したらしいですわ」

揺光【ほー、いまどきこういった術を得意としておるとは……相当な外道か特殊な奴じゃな】

福太郎「そーなんすか?」

揺光【うむ。いつの時代でも死者をどうこうする術は異端、外法じゃからな】

福太郎「ほな揺光さんは?」

揺光【こんこん♪なにをいっておる妾は外道畜生ぞ。禁忌の術でもなんでもやるわ】

クロ「おいおい…」

メリー「どんなことするの?」

揺光【そうじゃなぁ……最近じゃとこういうことを覚えた】
スッ……ぼとぼとぼとぼと…

メリー「わっ、卵?!」

揺光【温泉卵じゃ。美味いぞ】

クロ「いやいや、なんで?」

揺光【温泉行脚してのぅ。いつでも温泉卵が食いたいと思って作った術じゃ】

福太郎「はふはふ。これは……危険な術やな」

お仙『かぱっ……ごくン。大変だ、手が止まらなイ!』

メリー「ご主人様ー!私も食べたーい!」

クロ「少しは怪しめよ!」

揺光【安心せい。これは本当にただの温泉卵じゃ。あ、まんじゅうも出せるぞ?】
ぽんっ

クロ「何妖怪だよ…」

揺光【温泉妖怪でも良いかも知れんな、こんこん♪】

クロ「いや、いいのか…」

揺光【今どき恐怖と悪夢の大妖怪とか流行らんじゃろ。のんびりゆったり世界の流れを楽しみたいわい】

福太郎「極めた人の達観やなぁ…」
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