第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

紫「はーい♪」

福太郎「ゆかりん、またでっか……」

紫「あらあら、アナタっていつもご飯食べてるわね。ぱくっ。」

福太郎「ちゃいますやん。昨日とまったく同じ時間ですゃん。ってか、摘まんで食べるんはやめてくださいて。」

紫「ケチねぇ」

着物の女性「もぐもぐもぐもぐ」

福太郎「ケチとかやなーてマナーというか」

着物の女性「もぐもぐもぐもぐ、そうよ。紫、ちゃんとお箸を使っていただかないと。もぐもぐもぐもぐ」

紫「ちょっと摘まんでたべるのが良いんじゃない」

福太郎「……え、あれ、どちらさん?」

幽々子「西行寺幽々子です」

福太郎「あ、どうも、御堂福太郎いいます……えーと、紫さんのお友達で?」

紫「アナタって本当に驚かない人ね」

福太郎「いや、人間驚きが有る域を突破してしもうたらこんなもんですよ」

幽々子「おかわりいただけるかしら?」

福太郎「ん、わかりました……あれ、これ俺の茶碗やん……味噌汁のお椀も」

紫「あ、私のもお願い」

福太郎「はぁ……まぁええんですけど。そんなにご飯もオカズもないですよ?なにせ、ふだんからひとり分しか作りまへんし」

紫「ふっふっふ、大丈夫よ。私はタダでたかる様な女じゃなくてよ。冷蔵庫を開けてみなさい」

福太郎「へ?」

いわれるままに開けてみると……山の幸、海の幸がギッシリと敷き詰まっていた。いつのまに……というか岩魚(イワナ)まだ生きていてぴちぴちと動いている。

紫「ほーら、こういうのも持ってきたわよ」

ずるるっとスキマから取りだしたのは一升瓶だった。

福太郎「つまり……材料と酒は一緒に飲み食いさせてやるから料理してだせぇ……いうことでっか?」

紫「ふふふ」

幽々子「ふふふ」

人外の美女が怪しく微笑む。

福太郎「まぁ……ええですけど、どんちゃん騒ぎは堪忍してくださいよ」

紫「私たちは淑女だから、その点は問題ないわよ」

福太郎「淑女は夕飯時に押し掛けてきたせーへんと思いますけど」

紫「アナタ寛大なの?それとも細かくつっこむ性質なのどっち?」

福太郎「気になった部分はつっこむ派ですかね」

すっきー『わっ……なんか騒がしいと思ったら。』

紫「はぁい、今日はお友達も連れてきたの」

幽々子「にこっ」

すっきー『ゾクッ……あ、ど、どうも』

紫「成仏した時に会うことになるからしっかり顔を覚えとくといいわ」

すっきー『そういう領域のお方っすか……。』

福太郎「そういえば……西行寺さんはなに妖怪ですのん?」

幽々子「あたしは妖怪じゃなくて亡霊よぉ~。死を操れるの」

福太郎「へぇ……あぁ、せやから死んだあとお世話になるんですね」

紫「そういうこと。っていうか、アナタもーう少し反応良くなさいよ」

福太郎「はぁ……もしかして、俺の命でも持っていくんで?」

幽々子「死にたいの?」

福太郎「んー……いや、どーやろなぁ」

紫「イエスともノーとも言わないのは本当に危ない事よ?」

福太郎「んー……でもまぁ、今では無いやろし」

幽々子「あら、その根拠は?」

福太郎「もし今やったら……冷蔵庫の中ン物がもったいないですゃん」

紫「……ふふふ」

幽々子「……あはは、それもそうね」
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