第捌夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「まぁ、姉さんが餓死しそうなんは分かったわ。拾ったんも何かの縁やし、食べたいもんある?」

女性「本当かね!ではおにぎり!おにぎりがたべたい!」

福太郎「そんなんでええの?」

女性「自分はお米さえあれば他に何もいらない女なのだよ。今の空腹度なら百個は軽いね!」

クロ「百個とか無理だろ」

女性「余裕」

福太郎「いやー、無理やて」

女性「余裕!」

お仙『無理無理(≡つ・ω・)≡つ=つ≡つ=つ≡つ=つ≡つ=つ≡つ』

「⊂≡⊂=⊂≡⊂=⊂≡⊂=⊂≡⊂=⊂≡(・ω・⊂≡)余裕余裕」女性

クロ「なんでお前らそんなやり取りできるんだよ。ってか、元気だなアンタ」

女性「あぁ、今ので更にお腹が……」

福太郎「んー、まぁ、ほな、おにぎりつくろか。クロ」

クロ「あ?」

福太郎「ぼそぼそ(一応メリーちゃん気を着けといたげて。)」

クロ「あー、平気だろ。しっかりお人形してるし」

メリー「……」

福太郎「よし、まずはジャーの中のからいこか」


~むすび中~


女性「あむあむ!うむ!とても美味しい!おにぎり作るの美味いじゃないか、キミ。愛だね!」

福太郎「まぁ、おにぎりくらいはなぁ。んっ、ちなみにのこしたら罰ゲームな」

お仙『お米とーぎとーギ!』

クロ「本気で百個作る気かよ…」

福太郎「んー、どないしょっかな」
にぎにぎ

クロ「あの女めっちゃちまちま喰ってるし百個どころか今出来てる皿の分すら食えないだろ…」

女性「……」

福太郎達が後ろを向いているのを確認すると女性はかぶっていた帽子をそっと脱いだ。次の瞬間、後頭部がバクッと開く。

メリー「!?」

女性「……」

長いオサゲ髪二本がおにぎりの盛られた皿を掴んで、その開いた後頭部に傾けた。どうやら、髪を手のように自在に操れるらしい。

転げ落ちていくおにぎりが後頭部の口らしき部分に次々と転げおちていく。

福太郎「んっ、はい、次のおかわり……あれ?」

パッと帽子をかぶりおにぎりにちまちまと噛みつく女性。

女性「あむあむ」

福太郎「んー?」

十数個は握ってあったおにぎりが綺麗に無くなっている。

メリー「(ご主人様ー!頭!頭!)」

お仙『なぁ、クロ。メリーが踊ってるゾ』

クロ「は?変なこと言ってないでちゃんと米すすげよ」

女性「どうかしたかね?」

福太郎「んー……なんかした?」

女性「なにかって食べてるだけだよ」

福太郎「そっかー、食べとるだけか」

福太郎が振り返ると、再び帽子を脱いで後頭部の口におにぎりを放り込んでいく。

福太郎「っと、見せかけて巨大おにぎりダンク!」

女性「んぐっ!!」

おにぎりというかご飯の塊りを叩きつける。ほんらいなら後頭部にご飯が落ちて悲惨な状況になるはずだが、ずぶずぶとバックリ開いた「後頭部の口」の中に沈んでいく。

福太郎「変やと思ったら……やっぱり妖怪やってんね」
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