第捌夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋界隈ー

福太郎「んー、こんなもんかな買いもんは」

クロ「米の買いだめはやめよーぜ。重たくてかなをねぇ」
ゴロゴロ

福太郎「安かったんやし、ここで買っとかなアカンやろ」

クロ「だからって台車使って徒歩で買いに行くなよ。車借りろよどうせなら」
ゴロゴロ

福太郎「買い物だけに代車するんわなぁ……。はっ、もしかして今のは台車の代車的な?」

クロ「うるせぇ黙れ」
ゴロゴロ

福太郎「……」

クロ「……」
ゴロゴロ

福太郎「かわろか?」

クロ「いいよ、お前力ねーし」
ゴロゴロ

福太郎「せやね!」

クロ「満面の笑みで認めんな。少しは否定しろ」
ゴロゴロ

福太郎「んっ、なぁなぁ。」

クロ「話を逸らすな!」

福太郎「んっ、いや、アレってなんやろ」

女性「……」

クロ「女だな」

福太郎「女の人やな」

クロ「倒れてるな」

福太郎「やっぱりアレは倒れとるよな。どないしょ?」

クロ「いや、どーするって……放置はマズイよな」

福太郎「一応声掛けるべきやろなぁ。もしもーし?」

女性「うぅっ…」

福太郎「どないしたんです?持病のシャクかなんかですか?」

クロ「シャクって…」

女性「お……」

福太郎「お?」

女性「おなか……」

福太郎「お腹が……痛い?」

女性「お腹……すいた……」

福太郎「速報、空腹。」

クロ「蹴飛ばしとけ」

福太郎「それはえげつないわぁ。」

女性「うぅっ……」
ガクッ

福太郎「あ、落ちた」

クロ「どーすんだよ。」

福太郎「んー、放置するわけにもいかんし。よいしょっと」

ドサッ
クロ「とうぜんの如く台車に乗せんな」

福太郎「せやけどここで放置はなぁ。」

クロ「犬猫じゃねーんだぞ……。妙なもん拾うなよホント」
ゴロゴロ

福太郎「犬猫のほうが大分楽な気がするなぁ」

クロ「分かってて拾うなよ…」




ー福太郎の部屋ー

福太郎「ということで空腹さん拾ってきた」

お仙『喰うのか?』

クロ「空腹してる奴を食ってどーする」

女性「ううっ……こ、ここは?」

メリー「あ、ご主人様。気がついたみたいよ」

福太郎「どーも、なんや倒れとったみたいやから運んできたんやけど、どないしてんです?」

女性「わ、私は田舎から出てきたんだけど先立つモノがなくてねぇ。空腹に耐えかねて何か食べモノを分けてもらおうと家々を回ったんだが門前払いされて……都会の人は冷たいね。やはり人の世は悲しみと裏切りが溢れているね。くっくっくっ」

福太郎「んっ、多分やけど都会の人とか関係無しに、今のご時世いきなりひとの家に押し入ってモノをくれいうても無理やと思うで。ヘタしたら警察沙汰や」
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