第捌夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「ただいま」

悠「はい、ただいま、お邪魔しますよっと。」
ごろんっ
首なしの身体「……」

お仙『なんだこレ。私の新しいボディカ?』

悠「おれと同じこと言った」

福太郎「お仙は付け替え式と違うやろ」

悠「これはな……」

恋「皆まで言うな」

悠「あ?」

恋「ついにか……いつか女で破滅すると思っていたが……。否、安心せい!世が許さずとも恋は悠の味方じゃ。で、どこに埋める?」

悠「お前がおれをどー思っているか分かって嬉しいやら悲しいやら。」

福太郎「恋ちゃん、これ死体ちゃうで。どーやら生きとるみたいなんよ。」

恋「なぬ?」

悠「何してもまったく反応ないが脈はある。」

恋「するとなんじゃ……抜け首かえ?」

メリー「抜け首?」

恋「うむ。首なしの妖怪は色々おるが、全く動かないのなら抜け首の可能性が高いの。夜、身体を残して首だけがフラッとどこかに飛んで行ってしまう、先ごろ悠達が出会った「ろくろ首」と似たような妖怪じゃ」

福太郎「つまり……首がつながってないから動かへんだけなんやね」

悠「なんだ、じゃあ心配することもなかったな」

お仙『かんかんノ~』
抜け首身体「……」
ぶんぶんっ

メリー「振り回しちゃ駄目だよ!」

恋「それがそうにもいかん。首が抜けとる間は身体の方がどうなっとるか首にはわからんのじゃ。そして、朝までに首が胴体に戻れなんだら、本当に死んでしまう」

福太郎「あらあら」

悠「あー……って、待て待て、ひょっとしてまたこれ元の場所に戻さないといけないのか?ここまで運ぶのそこそこ疲れたんだが。」

恋「……」

悠「……時に恋よ、もしコイツが死んだとしてもお前はおれの味方なんだよな?」

恋「このまま放っておいて死なせた日には、世が許しても恋だけは許さんからな?」

福太郎「んー、っていうかだ、わざわざ身体を運ばんでも首の方を身体に案内すればええんちゃう?」

悠「さすが福ちゃん。ちゅーしたげる」

福太郎「んっ、いらん」

恋「アホやっとらんでさっさと行くぞ」




ー夢見長屋近く:集合墓地ー

抜け首「あ゛あ゛あ゛あー!なんでー!身体ー!どこーーー!」

悠「アレだな」

福太郎「恐怖、真夜中の墓場で嘆き叫ぶ首。これめちゃホラーちゃう?」

恋「まぁ、ホラーじゃがな……」

悠「おーい、そこの首ー!」

抜け首「へ?」

福太郎「ん?この顔どっかで見たことあるような…」


~事情説明中~

抜け首「あ゛あ゛あ゛!?なにさらしとんねんアホんだらぁ!」

悠「落ち着け。知らなかったんだ。仕方ないだろう。あのまま身体を置いといたら野良犬にかじられてたかもしれないし」

福太郎「っか、キミさ。こんまえろくろっ首ちゃうかった?」

抜け首「ろくろ首は妹や。つていうことはアンタらか。ろくちゃんの世話してくれたいう人間は」

悠「あぁ、だからあのろくろっ娘は抜けちゃんっていってたのか…。」

福太郎「せやで、せやけどなんでまたここで首抜けしとるん?」

抜け首「いや、またはぐれて道に迷てしもてん」
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