第七夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋界隈ー

福太郎「おっと…」
どっん!
「わっと…」

福太郎「失礼、大丈夫?」

「こちらこそ、よそ見をしていて……失礼します」

福太郎「あっ…」

お仙『どした?』

福太郎「んっ、いや、今ぶつかったひとが何か落していきはってんけど……なんやろこれ?」

お仙『んー、鼻?』

福太郎「鼻……やよな?」

お仙『鼻だナ』

福太郎「玩具にしては造りがリアルな……」

「ああ、あのー!」

福太郎「はい?」

「すいません、今落し物を……」

福太郎「もしかして、この鼻?」

「そ、そうです!」

お仙『顔から落したのカ?』

福太郎「こらこら」

「よくわかりましたね…」

福太郎「へ?」

お仙『……』

「私の顔こんな顔なんですよぉー!」

見せつけてきた顔には目も、鼻も、口もないのっぺらぼうだった。

福太郎「へー」

お仙『ほー』

のっぺら女「えぇ!驚かないの!?」

福太郎「んー、驚いとるっちゃ驚いとるけど……それよりも口ないのにどこから声出しとるん?」

お仙『コイツ、脳に直接……』

福太郎「いやいや、音として聞こえとるから。あ、はいこれ、お鼻」

のっぺら女「あ、どうも……って、なんで驚かないんですか!」

福太郎「驚いとるよ」

のっぺら女「ド真顔じゃないですか!」

福太郎「目が無いのに見えとるって事にも驚きやわ」

お仙『不思議だナ。突いていいカ?』
ジャキン!

のっぺら女「そんな鋭利な爪で突かれてたまりますか!」

福太郎「やっぱり見えとるんゃな」

お仙『なんか面白いナ』

のっぺら女「面白がられだしたし……もう。」

顔に「鼻」を着けて手で顔全体を覆うと目、鼻、口が揃ったちゃんとした顔になる。

福太郎「んー、お見事」

お仙『のっぺら坊って顔のパーツが着脱式なのカ?』

のっぺら女「のっぺら坊だって時代にあわせて進化していくんですよ。」

福太郎「んんっ、やっぱりのっぺら坊なんやね。っていうことは……妖怪?」

のっぺら女「はい、妖怪です。あなた達も妖怪なのよね?」

福太郎「んー、俺は人間」

のっぺら女「人間だった?!」

お仙『キョンシーダ』

のっぺら女「こっちはキョンシー!!何か私の方が驚かされてるわ……」

福太郎「メリーちゃんとか隙間女とか犬妖怪も居るよ」

のっぺら女「都市伝説の有名どころ勢ぞろい?!犬妖怪っていうのも人面犬?」

福太郎「んーん、本人は大神っていうとる」

お仙『ワンワンガール』

のっぺら女「えぇ……なんで人間がそんなメンツと知り合いなの?」

福太郎「んー……偏に縁かな。あぁ、あと家には居らんけど九尾の狐とか座敷わらしとかとも知り合いやで」

のっぺら女「超ド級妖怪と超メジャー妖怪まで?!」
ポロっ

福太郎「あ、鼻落ちた」

のっぺら女「驚きすぎて顔が維持できないわ……」

お仙『面白いナ』
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