第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー散歩道ー

福太郎「ん?」

悠「どした?虹に触れちゃってカタツムリ化しはじめちゃったか?」

恋「どんな状況じゃ!」

悠「ウェザー・レポート封印が解けて記憶が戻って……」

福太郎「あの、いうてええかな?」

悠「いいよ」

恋「なんじゃその身の振りの速さは……」

福太郎「あ、でも……悠は見えるんかえ」

悠「福ちゃん、さっきから何の話をしてるんだ?唇をプルプルしていい?」

福太郎「ごめん、悪いんやけどジョジョネタは第五部くらいまでにしてくれんと分からんわ」

悠「ジョバーノあたりか……それじゃあ、大統領夫人ネタは分からんな。っか、結局なに?」

福太郎「目のまえにふよんふよんした正体不明の生きもんがおる。」

視線を下に落とすと確かにふよんふよんした何かがいた。見た通りを説明すると半透明色のスライムを簡単に人のかたちにして感じで本来顔がある位置には東洋で祭りの際に被ってそうなお面が乗っている。ひと言でいうならば子供がつくった人形。それが風に揺られてふよんふよんとしてるのだ。

悠「なんだこれ」

福太郎「悠にも見えるってことは妖怪かな?」

悠「この前は目目連が出るし都市伝説から若干違う毛色のまで現れ出したな」

福太郎「せやね……ていうか、なんかだんだんと背高あなってない?」

悠「そういえば……目線をあげてくとますます身体が高く伸びてってるな」

正体不明のなにかは既に福太郎も悠の身長を超えて高く高く伸びていっている。

恋「それは「伸び上がり」じゃ。目を逸らせ。倒されるぞ」

福太郎「そら、危ないな。恋ちゃん、おおき……」

悠「いや、こういうのは先に目を逸らした方が負けだ。直接殴り合ってもこない妖怪ごときに引いてたまるか」

恋「阿呆か!」

福太郎「あ、でも凄い、めっちゃ反り返って対抗しとる。」

悠「ぬぬっ……ブリッチ!」

既に天高く聳(そび)える「伸びあがり」だが、悠は転倒せずにブリッジの体勢でまだ、目線を逸らさない。

福太郎「あっ」

恋「……」

悠「……」

ブリッジした結果、後ろにいた恋をローアングルから見上げる形になっている。

恋「っ//!」

グシャ!
悠「ぷぎゃ!」

福太郎「あ、顔踏んだ。しかも、土足」

悠「い、いくらなんでもわざとじゃないんだし。しかも何も見えてないのに土足でふみつけは酷くないですか?」

恋「すまぬつい//」

悠「はっ、そうだ!奴は!!」

福太郎「ん、いつの間にやらおらんようなっとるね。……引き分けでええんちゃう?」

悠「むう……福ちゃんがそういうのなら。」




~妖怪録~

【伸びあがり】
目の前に現れたかと思うと、見る見る背が高くなり、見上げれば見上げるほどにますます高くなり、ついには見るものを転ばせてしまったりする妖怪。姿ははっきりしないようですが、かわうそが化けたものだとも言われている。
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