第七夜『福太郎の不思議な日常』

ーすっきーの部屋ー

すっきー『福太郎さん』

福太郎「ん?」

すっきー『福太郎さん、あたしはかつて名前もなくて……ただ隙間から誰かを見ているだけの、とても薄い存在でした。』

福太郎「……」

すっきー『あなたの前にも何人かあの部屋で暮らしていました。色んな人がいて毎日の暮らしぶりをずっと見てきたけど、彼らに干渉しようと思ったことはなかった。まぁ、みんなあたしに気づいたら出ていっちゃいましたけどね』

福太郎「…………」

すっきー『彼らが伝えて、都市に広まる私の伝説。皆に忘れ去られなければ、私は存在し続けて居られる……それだけでも私は良かった。だけど誰とも触れ合わなければ心は消えてゆくだけ。そんなとき、私はあなたと出会った。あなたはとても変わってて特別で……一緒に他愛のないことを過ごす。毎日が楽しくて、私を見るあなたの目が、私に話しかけるあなたの声が、私に触れるあなたの指が、私の形を浮かび上がらせていく。……それがとても嬉しかった。』

福太郎「………………」

すっきー『でも……あなたもいつかはあの部屋を出ていってしまう。そうしたら私はまた誰かを見ているだけの形のない何か、それはもう嫌。』

福太郎「んー、このあたりかな……」

すっきー『だから、ずっとここにいてもらいます。いいですよね?福太郎さん。まーイヤといっても絶対出してあげませんけど。フフフ』

福太郎「ここらから出られそうやな。えーと、このお札効果あるかな」

タンスとタンスの隙間に札を差し込む、メキョッ!音を立てて空間がゆがんで自室が見えた。

お仙『オ?』

福太郎「よっ」

お仙『ヨッ』

声も通じる。一旦札を抜くと、元通りになる。

すっきー『……』
ススッ

福太郎「さすがラムさんのお札。結界(?)も開くことが出蹴るみたいゃな。……で、何が反省?」

部屋の隅へと逃げようとするすっきーの頭と肩を掴んだ。

すっきー『あ゛あ゛あ゛あ゛ごめんなさい調子こきましたぁーーーーっ!!』

福太郎「んっ、いや……」

すっきー『…………っ。ううっ……うわ~ん!福さんがあんまり酷いからちょっとだけいじわるしたかっただけなのにーっ!あーん、もうイヤ!もう嫌い嫌い!嫌いですーーっ!びえーん!』

ぺたりと座りこんでマジ泣きするすっきー。

福太郎「しゃーないなぁ。ほら、これあげるけん機嫌直してや泣き虫さん」

すっきー首に例のネックレスをそっと着けた。それが何なのか理解したすっきーは力が抜けたように後ろに倒れかかったので支えるように、その身体を抱き締めた。

すっきー『へ?あ…あれ?これ?なんで?さわれるし…2コあった?』

福太郎「さすがに二個は用意でけへんわぁ。悠オリジナルやし。壊したネックレスから抜いたんよ」

すっきー『ぬ、抜いた?…あ~何となくわかるよーな……てゆーか狙ってやりましたよね?』

福太郎「んー、サプライズのつもりやってんけど」

すっきー『…もう……許したわけじゃないんですからね……でも……ありがとう///』

福太郎「いつか…俺があの部屋を出ていくとき…一緒に行く?メリーちゃんも一緒やしクロやお仙も誘ってみよう。望むだけ一緒におろ。別れは自分で決めたらええ。後悔のないように……な。」

すっきー『……はい、その時まで、一緒に!』




ー福太郎の部屋ー

福太郎「さて、ほんなら今日こそ画材買いに行ってくるね。」

クロ「あいつまだ出てこねぇな」

メリー「仲直りしたんでしょ?」

福太郎「んー、さあなぁ。」

お仙『ラヴ臭がすル。』

クロ「ついに脳が本格的に腐ったか」

お仙『失礼ナ!』

福太郎「ははっ、ほな行ってきます」



ーすっきーの部屋ー

すっきー『あああああ~っ///!言っちゃったぁあぁあ今思い返すともう恥ずかしくて顔合わせられねぇーーーーーっす///!うあぁああぁああ~~~んっ///!!!』
ゴロゴロゴロ!
バタバタバタ!

なかなか出てこないので後日、悠に引きずり出されましたとさ。
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