第七夜『福太郎の不思議な日常』

ー某所:墓地ー

ラム「ここね山川有希の墓は…」

牧野「そうだね。花も生けたばっかりだし間違いなしっしょ」

山川家と掘られた真新しい墓石を見つけ、女子二人が下に向かって叫んだ。

ラム「唐津くーん、ありましたよーーっ」

牧野「こっち~~」

九郎「な~にが気楽にだキショー」

福太郎「駅から二時間もかかったもんなぁ」

谷田「お二人、平気ですか?」

沼田「なんとかな」

死体の入ったゴルフバックを肩に担いで石段をあがる唐津と沼田。

一応交代できるように福太郎と谷田が同じペースで歩んでいるものの、どう考えても交代したらペースダウンするのでふたりが頑張っている。

そんなこんなでようやく墓の前について死体を降ろす。

福太郎「お疲れさん」

九郎「ふぅ~~しかしどうする昼間から堂々とってわけにもいかねーだろ……」

谷田「その辺でビバークして夜を待ちましょう…」

牧野「え~もしかして野宿すんの?」

福太郎「……」

九郎「どうかしたのか?」

福太郎「んっ、いやー……ええ眺めやなと」

九郎「あぁ、確かにな。見晴らしはいいけど、この階段だと墓参りにはちょっと辛いけどな」

福太郎「んー……」

九郎「?」

ラム「アンタ、画材持ってきたらよかったとか思ってるでしょ?」

福太郎「んっ、バレた?」

ラム「はぁ……」

九郎「アンタ、絵描く……って、そういえば樹海にも画材持ってきてたな」

福太郎「ははっ」

ラム「笑いごっちゃないわよ」

福太郎「ヘタの横好きなんやけどね、絵描くんが趣味なんで」

九郎「へー、いいな。俺は絵心とかないからなぁ、こんど良かったら見せてくれよ」

福太郎「ええですけど、大したもんやないよ。ホンマ」

牧野「人物画とかは?」

福太郎「んっー……人は描かんかな。ギリギリ動物までで、苦手なんよ人物画は」

牧野「えー、残念。上手なら描いてもらおうと思ったのにぃ」

沼田「ヌードか?」

牧野「馬鹿」

福太郎「まぁ、描くんやったらヌードがええかな」

牧野「えぇ……。」

ラム「コイツ、ポーカーフェイスだけどスケベよ」

福太郎「男たるものスケベやなーなったら……終わりやろ?」

九郎「そりゃそうだ」

沼田「確かに」

谷田「えーと……」

ラム「はあぁぁ……」

牧野「ははっ…ユニークなのね」

福太郎「まぁ、関西人ですから」

牧野「……」

ラム「何いってんだか」

谷田「あ、画材ではないけど、ノートと鉛筆くらいならありますよ…」

福太郎「んっ、ホンマ?ちょっと借りてええ?」

谷田「どうぞ」

ラム「本気で描きたかったんだ…。」
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