第七夜『福太郎の不思議な日常』

ー某大学仏教部:ボランティア友の会部室ー

岬「でもそれホントなの?彼の勝手な妄想とかじゃなくて…」

九郎「幼友達…だそうだ。ん…手帳に写真があるって」

谷田「これですかね」

彼の持ちモノの中から手帳らしきものを持って開いた谷田の周りに皆が集まる。

沼田「どれどれ」

牧野「へ~っホントだ」

手帳に挟まっていた写真には男女がなかむつましく写っていて、互いの薬指に指輪をはめていた。

九郎「『ボクら…は……彼女の父親に付き合いを……反対されていた…彼女が芸能界へ入ると…それはますますひどくなり…会うことはおろか近づくことも許してくれなくなって……だからボクらはいっしょに…逃げて……心中したんだ…だけど……有希に会えない……一緒に死んだはずなのに…頼む…有希のところへ連れてってくれ…』と彼が言いたいことはだいたい伝えたぜ…他に何か質問は?」

岬「そうね…これはどうしたらいい?」

岬は彼の手帳の間から落ちたものを拾って聞いた。

九郎「……あげるってさ」

福太郎「お金?」

ラム「いいや、宝くじね」

岬「まっ確かにボランティア友の会だからね……私達、これで死んだ人助けしますか」

九郎「それはいいけど、福太郎とラムはどうするんだ?」

牧野「ラムちゃんはともかく御堂さんは学生でもないよね。」

岬「本人に決めてもらっていいわよ。ボランティアとして参加してくれるなら、ここへの出入りは私の方から許可をとっておくけど」

福太郎「んー……乗りかけた船には、ためらわずに乗ってしまえ。っといいますし」

沼田「なんだっけ?」

九郎「ことわざだろ」

ラム「ツレゲーネフよ。イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ。19世紀ロシアを代表する小説家。」

福太郎「ということで、お付き合いしますわ。」

岬「わかったわ。それじゃ、今日はとりあえず解散ね。死体は……ここに置いておきましょう」

九郎「なんだかなぁ……」




ー福太郎の部屋ー

福太郎「ただいま」

ラム「ただいま…」

お仙『お帰リ』

クロ「なんかガッツリ疲れてんな」

福太郎「死体と話しして死んだ恋人探しすることになってね。」

クロ「何いってるのか分からねぇ」

福太郎「まぁ、いろいろ有ったんよ」

ラム「色々あり過ぎてだるいわ」

お仙『ちっこい身体のエネルギー使いきったカ』

ラム「あとで覚えてなさい……」

お仙『風呂は沸いてるゾ』

クロ「湧いてるんじゃなくてお前が入ったんだろ」

福太郎「よかったら浸かってきます?」

ラム「いいの?」

福太郎「汗かいとるし流したいでしょ?」

ラム「そうねぇ……じゃあ、お言葉に甘えるわ」

福太郎「ごゆっくり」

お仙『まるで…夫婦いや、親子だな』

福太郎「確かに」

ラム「お前らあとでホント覚えてろよ」

クロ「なんだかなぁ……」
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