第七夜『福太郎の不思議な日常』

ー青木ヶ原樹海ー

福太郎「……いつの間に?」

見てみると死体はまるでここまで自力で這って来たような形で倒れている。

九郎「へへ…ハハッ大したもんだね……それ、いやマジで…チャネリングっての…?確かにオレもまあ普通じゃないとは思ってたんだけどさ…」

岬「なに…どういう事?」

唐津君は死体の前でひざを着いて誰ともなしにいった。

九郎「オレ死体の声が聞こえちまうんだよね…」

福太郎「死体の声……」

こっちで集まっているのに気がついたのかエンバーミングをしていた娘とダウジングの革ジャンの人がやってきた。

牧野「ねえねえなんかあったのそっち~?」

谷田「いや……唐津さんが…その……」

沼田「おっ見つけたのか」

牧野「で…何してるのアレ」

ラム「どうやら死体と話せるらしいわ…彼」

九郎「あんまし触りたかねーけど…」

唐津は死体の背中にソッと手を置いた。

岬「つまりイタコってわけ?」

九郎「『……一緒に、一緒に死んだはずの…恋人がいる……彼女…有希と一緒に……埋葬してくれ……』」

「「「…………」」」

九郎「だと…どうする?」

岬「面白そーじゃない、それ…」

福太郎「死体の恋人探し……か。なんやロマンチックやね」

ラム「アンタのロマンはなんかおかしい」

牧野「ならまずはその死体さんの身元調査ね。」

沼田「だな」

九郎「…ってオイこの死体のいう事聞くつもりかよ」

岬「そーよ」

九郎「そーよってなあ…」

福太郎「んー。こん人、この世にまだ未練あるから唐津君に話しかけたんやろ?」

岬「そうよね、それを唐津君は無視して放っておけるの?」

九郎「…………」

ラム「今分かったけど唐津さんって頼まれると断れないタイプでしょ?」

九郎「それは…いえてる」

岬「じゃ、とりあえずこの死体見つからないように学校へ持ってきましょ」

九郎「って学校へもってくのかよっ」

岬「あら別に校則に違反してないわよ?」

福太郎「ほんなら……とりあえずシートか何かに包みます?防災用のシートやったらあるよ。あと、ロープ」

ラム「あら、準備いいわね。」

九郎「マジか……。」




ー某所火葬場ー

サングラスの男「フゥゥ…」

黒服の男「…しかしこんなモンですかね山川さん」

山川「なにがですか?」

黒服の男「有希ちゃんですよ…そりゃ最近でこそラジオの仕事一本きりだったけど一応タレントですよ。なのに葬儀に来たのは同じ事務所のコが数人だけでマスコミすら来ないなんて…」

山川「しょせん有希は芸能界なんて水があわなかったんですよ。ずっと田舎で私のいう事だけ聞いていればあんな男にそそのかされることもなかったのに…あんな男に…」

黒服の男「そういや有希ちゃんお父さんと二人きりの家族なんでしたっけ」

山川「えぇ」

黒服の男「さみしくなりますねこれから…」

山川「…いえいつまでも有希は一緒ですから…」


~~


住職「よお山川さんトコ骨あげまだ?」

業者「ああもうできるけど……」

住職「けど?」

業者「コレ、変じゃないか?」
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