第七夜『福太郎の不思議な日常』

ー青木ヶ原樹海ー

福太郎「せやけど、求人見ててなんでまたボランティアに?」

九郎「それは……あっ」

福太郎「ん?」

視線を前に向けると警察の二人が担架に乗せて運んでいた死体の手がズルリと垂れ下がっているのが見えた。

九郎「うわ~っモロ見ちまったナンマイダナンマイダっと」

そういいながら何故か彼は十字を切っている。仏門的にいいのだろうか?

「ちょっと!」

福太郎「ん?」

後ろから女性の声が聞こえて振り返るとショートカットにレンズの薄い眼鏡をかけた女性があきれ顔で九郎のほうを見ている。

眼鏡の女性「唐津君、十字切るのはマズイんじゃない。一応私たち仏教大の学生よ?」

九郎「あんたか……だってオレ枕経なんかロクに覚えてねぇもん…」

福太郎「そうなん?」

九郎「あぁ、まったく覚えてない。御堂さんは?」

福太郎「んー、全然」

眼鏡の女性「ったく何しに来たんだか。貴方たちね、これウチの学生と有志と地元警察とがお経をあげるボランティアだって説明聞いてた?」

九郎「一応」

福太郎「一応……ところで、ええと?」

岬「佐々木岬(ささきみさき)。このボランティアの友の会の一応まとめ役ってトコね。」

九郎「求人見てたら急にコレに誘われて何か参加しちゃったんだよ。俺は」

岬「アナタは確かラムちゃんの知り合いさんよね」

福太郎「んっ、御堂福太郎です。ラムさんに暇なら参加しなさいいうて着いてきたんですけど」

岬「正直ね。っていうか、死体とか平気みたいね」

福太郎「はぁ、まぁ、割と」

九郎「アンタ、そういう仕事の人か?」

福太郎「んーと、本職は外国のひとのお世話的なもんをしたりしとるよ。具体的にはひとりで暮らしていけるようになるまでのサポート的な…」

九郎「へぇ、なんか大変そうだな」

ふと、岬さんのほうを見るとデジカメで写真を撮っていた。もちろん死体の……。

福太郎「……にしても、あれやね。何人か参加者はおるんやね。」

辺りを見回すと死体のそばで道具を使って何かしている女の子や、変わった手袋(っていうか人形?)をはめた男の子や警察を先導して歩いている革ジャンの男性。

九郎「妙な感じの奴ばかりだな」

岬「ああやっぱりわかる?友の会のメンバーよ。私たち、この大学の生徒にしては珍しく家がお寺とかじゃないのよ」

福太郎「唐津君もやったね」

九郎「あぁ。」

岬「でしょ……お寺継ぐのが当たり前のウチの学校だと自然とそーゆーのが集まっちゃってね…まぁ趣味も似てるってゆうのもあって……自分たちの趣味を生かして何かできないかなって思ってるんだけど……」

福太郎「ちなみに佐々木さんの趣味って?」

岬「私の趣味ってのがコレ…デジカメで撮った死体の写真をネットに流してお金取ってんの」

九郎「うげっ」

福太郎「なかなか崇高なご趣味で」
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