第禄夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「画材の掃除でもしよかな」

クロ「相当暇なんだろお前」

福太郎「暇や。晴れてたら出かけるんやけどなぁ」

小傘「絵を描くんですか?」

福太郎「下手の横好き程度にやけどね」

小傘「へー、どんなの描くんです?」

福太郎「風景画中心かな」

小傘「滝とか、鳥獣戯画とか?」

福太郎「鳥獣戯画とか渋いなぁ」

小傘「命蓮寺に飾ってあったの」

メリー「めーれんじ?」

小傘「あちきがお世話になってるお寺。色んな妖怪が居るのよ」

福太郎「寺に妖怪が居るん?」

クロ「どっかの廃寺は死体置き場になってるじゃないか」

福太郎「んー、そういえばそうやな。」

小傘「死体置き場?!」

福太郎「ただしく言うたらキョンシー保管庫」

お仙『キョンシーを死体とゾンビ扱いするでなイ!』

福太郎「サーセン」

クロ「死体だろ……。」

お仙『肉体的には死んでも心は生きていル!』
ズイ!
クロ「死んでんじゃん」

お仙『心は生きていル!』
ズズイ!
クロ「わかったから近づくな」

小傘「いい言葉ね」

福太郎「人間ガッツが大事やからね。」

小傘「妖怪は?」

福太郎「……アイデンティティというか存在の意味ちがう?」

クロ「急に真面目か」

福太郎「いや、妖怪は存在を忘れられたら死ぬんと同義なんやろ?せやったらやっぱり大事なんはアイデンティティちゃうかな」

小傘「じゃあ、わちきはドンドン人を驚かせていればいいのね!」

福太郎「せやね!」

お仙『人間を恐怖のズンドコにおとしてやレ!』

クロ「どん底だろ」

メリー「……でも、小傘ちゃんが人を驚かすのって難しいよね。」

小傘「なんですと?!」

クロ「驚く側だしなぁ」

小傘「そんなぁ、わちき凄いよ?本気出したらもうすっごいんだよ!」

クロ「凄くないやつの代名詞みたいないい方だな」

福太郎「驚かすんにも色々あるやん。例えばすれ違いざまに顔面殴ってくるとか」

お仙『それは驚ク!』

クロ「驚くどころじゃねぇよ!」

小傘「そういう暴力的なのはちょっと……巫女にバレたりしたらどんな目に合うか分からないし」

福太郎「ほんなら……お仙ちゃん」

お仙『あー……地面の中に埋まってて誰かが通り過ぎる瞬間に足を掴ム』

クロ「ゾンビじゃねーか」

お仙『古典的だがこれは驚ク』

小傘「埋まったら息ができない……」

福太郎「つぎ、メリーちゃん」

メリー「あのね、驚かしたい相手に電話をかけるの、それでね電話するたびに近づいていって、最後の電話では相手の背後にどーんって現れるの!」

クロ「それはお前の持ちネタだろ」

メリー「ネタって言わないで!」

小傘「電話ってなんですか?」

福太郎「遠くの人におる人と話せる器械かな」

小傘「あー、念話ですか。わちきはそういうのは出来ないんです」

福太郎「念話……まぁ、違うけどどっちにしろ没やな」
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