第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「……」

ぺたぺた……

すっきー『もくもくと描いてるっすね』

福太郎「んー……悠がこの絵買い取るって言い張っとるんよ。そんで、色も着けよんやけど。」

すっきー『桜満開って感じでいいじゃないですか』

メリー「とってもとっても上手よ。」

福太郎「自己満足やから上手い下手はええんやけど……売るとなったらなぁ」

後楽「兄さんは深く考えすぎてるぜ。ちょっとお小遣いが稼げたって思えばいいんだよ」

福太郎「そんなもんやろか……」

後楽「おうよ。」

福太郎「……」

後楽「……」

福太郎「なんで、後楽おりますのん?」

後楽「なんか……関西弁なのにゆるいツッコミだな…。」

福太郎「関西人が皆、ダウンタウンややすしきよしみたいなツッコミやノリが出来るとおもたらあかんよ」

後楽「それもそうだな。むしろ悠の兄ちゃんがボケすぎてるだけだし。おいちゃんも感化されちゃったのかなー。あっはは」

福太郎「あははっ……そんで、なにしてますのん」

後楽「いや、兄ちゃんも中々の憑き者筋のひとだと思って見に来たんだ。そうしたら……三体もの妖と共同生活してる」

すっきー『……』

メリー「……」

ミツバ『……』

福太郎「いや、ミツバは本物の猫やから。もうひとりはようようやから」

ようよう「あん?なんだ呼んだか?」

後楽「ほぅ、これだけの妖に囲まれてよく無事なもんだな」

福太郎「まぁ、別に……ちょっと隙間から見つめられたり、寝とるとき圧し掛かられたり、電話かけてきたりするだけやし」

後楽「ふぅん……でも、知り合った好(よしみ)だ。俺が祓ってやろうか?」

福太郎「は?」

後楽「おじさんは妖怪だが、いや、妖怪でもあるが僧でもある。現世に縛られた霊を送ることだって出来るんだぜ?」

福太郎「んー……成仏したい?」

すっきー『ぶんぶんっ!』

メリー「そんなの嫌っ!」

ようよう「どうやら……オレの本気を出さなきゃいけないようだな」
ビキビキッ……

メリー「ラオウみたいになった?!」

福太郎「ということで……除霊はええですわ。この子らは自分で決めれる子らやし。俺は迷惑してまへんし」

後楽「そうかい。なら、別になんもしねぇよ」

すっきー『ととっ……』

福太郎「なんでそんなん聞いたんです?」

後楽「いやぁ、兄ちゃんがよ。福ちゃんと話してると随分リラックスしてたからな。もし、福ちゃんが困ってるんならちぃーっと助けてイイコトしてやろうと思っただけよ。ま、みたところ福ちゃんは誰にも憑かれてる訳じゃないが……な」

福太郎「後楽ってただのダメニート親父かと思ったら……ちょっとええ人なんやね。」

後楽「おじさんはいい人じゃあないぜ。もし、そう思ってんなら既におじさんに化かされてる証拠さ。それじゃ、邪魔したな。絵、完成させてやってくれ。値段は三万でな」

福太郎「えぇ、そないしますわ。……ん?三万……?はっ!?」

すっきー『どうかしたっすか?』

福太郎「……財布の諭吉さん盗られたわ。三枚分」

ようよう「大した泥棒狸だな。」
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