第禄夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋界隈:廃校近くー

テシロ『突然、すいません。私はこの近くで飼われているテシロという猫なのですが』

福太郎「テシロ、手白?」

お仙『何か用事カ?』

テシロ『はい、噂で御堂様は鼠避けの絵をお描きになられるとのことで』

福太郎「鼠避け……んー、アレね。描くには描いたけど」

テシロ『ぶしつけなお願いなのですが一枚描いていただけないでしょうか』

福太郎「ええけど……猫が鼠避け?」

テシロ『はい、私の家は飯屋をやっていまして……。昔は私が鼠を捕っていたのですが、歳のせいか思い通りにいかず逃がしてしまうことも多くなってしまいました。なので、是非一枚描いてほしいのです。』

福太郎「んー……そういうことやったら構わんけど。今は紙も筆もないし早ぁても明日になるで」

テシロ『もちろんそれは構いません』

福太郎「ほんなら描き終わったらどこに届けたらええ?」

テシロ『私がこのあたりで待っていますので声をかけてください』

福太郎「んっ、OK」

テシロ『では、御堂様、お仙様、失礼します』

福太郎「礼儀正しい猫やったな」

お仙『クロもああいう風にんるのかナ?』

福太郎「ならんと思う」

お仙『きっとそうだナ』




ー池袋:商店街ー

福太郎「大根、ジャガイモ、焼き豆腐、厚揚げ、はんぺん、ゴボ天、すじ肉……これくらいあったらええかな」

お仙『ネタものはいれないのカ?』

福太郎「例えば?」

お仙『巨峰』

福太郎「ネタ以前にブドウへの冒涜やと思う。プチトマトならともかく」

お仙『妻の作る不味い料理1位に巨峰の味噌汁っていうのがあっタ』

福太郎「なにその罰。っていうか、何情報?」

お仙『インターネット』

福太郎「すでにネットまで使うようになったんや」

お仙『色々と面白イ』

福太郎「一位ってことは他にも順位つきであったん?」

お仙『2位は納豆ヨーグルトトースト。』

悠「朝食で出されたら、何故よりにもよってこの2つを組み合わせようしたんやっ!って叫びそうやな。」

お仙『どうせなら納豆、ヨーグルト、トースト全て別々で出してもらった方がまだ食べる気になル』

福太郎「逆順になっとるけど三位は?」

お仙『3位は芽付きじゃがいも入りカレー。』

福太郎「じゃがいもの芽にはソラニンいう 中毒症状を引き起こす可能性がある物質が含まれとるね。」

お仙『このソラニンを含む芽付きのじゃがいもがわんさか入ったカレーを出された瞬間、「殺す気か」とツッコミがはいるナ。』

福太郎「マズイだけやなく命の危機を感じる料理まで作るんは、もはやドジやミスとかいうた、カワイイ領域を超越したかなり危険な嫁やね」

お仙『そういう嫁さん欲しいカ?』

福太郎「んー、遠慮したいかなぁ」

お仙『意外と普通だったんだナ』

福太郎「えー、俺はいったいどんな目で見られとったんやろか」

お仙『色もの好キ』
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