第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ーファミレスー

福太郎「はぁー……。」

後楽「へぇ、改めてみりゃあなかなかいい絵じゃないか」

悠「その絵はおれが買うんだから汚すなよ」

福太郎「別に買わんでもあげるて」

悠「いいじゃんか。顧客とでも思ってくれ」

福太郎「顧客って……俺べつに今まで絵売ったことないし」

悠「んじゃあ、おれが初客」

後楽「そんなに金を受け取りたくないなら、おじさんに貸しときな。何十倍にして返してやるよ」

福太郎「うん、それだけはやめとく」

悠「ああ、もしどうしても嫌なら受け取った後募金箱にでもつっこんどいてくれ。このおっさんに渡るならカンボジアで子供が二クラスは授業を受けられるようになる。」

福太郎「なんの話し?」

悠「募金の話しさ」

後楽「おじさんも恵まれて無いから全然募金プリーズ」

悠「……」

福太郎「悠?」

後楽「便所か?」

悠「ほら、出入り口からバイト紹介雑誌もってきてやったぞ」

後楽「おじさんみたくないものは見えないんだよ」

悠「ぶっ飛ばすぞてめぇ!!」

福太郎「まぁまぁ、まぁまぁ、落ち着きぃな。この情報誌は俺がもろとくけん。」

悠「あれ、福ちゃんバイト辞めたのか」

福太郎「少し前にね。」

後楽「仲間」

悠「ふざけてると前歯が唇突き破るまで殴るぞ」

後楽「こんなことばっかり言うんだぜ」

悠「平和主義なおれはできたらこんな事は言いたくないんだけどな」

福太郎「平和主義って難しいもんやな」

悠「そうなんだよ。難しいんだよ」

後楽「なんだかなぁ」

福太郎「それにしてもあれやね。揺光さんが狐で、後楽が狸。」

後楽「あら、いつのまにかおじさん呼び捨てになってる」

福太郎「あと、狗神でもおったら狐狗狸(こっくり)やな」

悠「これ以上、おれに憑きものはいらないな。きっと憑くとしたら福ちゃんだな」

福太郎「いやー、うちも結構溜まってきとるし」

後楽「狗神は厄介だぜ……憑かれたら」

悠「お前がいうか?人ン家の財を埋没させてく妖怪が」

後楽「違う、違う。ちょっと借りてるだけ、借りてるだけだって。」

福太郎「たしか……狗神って繁栄させたりするんちゃうかった?」

後楽「あぁ、だが時には疫病を振りまいたり凶悪な呪い返しがくる。おいちゃんはこれでも善良な妖怪だが、狗神みたいなのを使役しようとしたら……馬鹿をみるぜ」

福太郎「そんなつもりは毛頭ないんやけど……悠は平気なん?後楽に憑かれて、揺光さんにも憑かれとうけど」

悠「後楽は恋のおかげでほぼ相殺。ちなみに揺光には憑かれてはないんだよ」

後楽「ギリッギリだがな。っても、アレが特定の人間に憑くことはねぇな。憑くんじゃなくつくさせる悪女だ」
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