第禄夜『福太郎の不思議な日常』

ー遊霊団地:百鬼襖の部屋ー

出雲「澄子ちょっとこっちこい」

澄子「なに?」

出雲「そこに座れ」

テーブルの上にはコーヒーとショートケーキが置いてある。

澄子「たっ食べねえぞこんな女の食い物!!」

出雲「とりあえず聞け。俺の話になるが俺はあんまり褒められた経歴じゃねぇ。不良の先輩に憧れて学生の頃はやんちゃしてたし、お巡りの世話にもなったし、今だってそれなりにちょっと悪い知り合いも多い。お前の憧れるゴロツキみたいなもんだ」

澄子「おお…」

出雲「だがな!!」

澄子「びくっ」

出雲「俺はこのケーキを食うぞ!!」

澄子「な、なんだよ。ビビって損した…。だからお前も食えって?」

出雲「そういうことを言いたいわけじゃない。」

澄子「……」

出雲「俺は不良の先輩の真似をしてるときずっと、ずっと苦しかった。」

澄子「……」

出雲「憧れに近づくために本当は好きなもんいくつもガマンしてた。今も同じ事してる」

澄子「…………」

出雲「この間、仕事で少し失敗してな。それからずーっとその人ならどうするか考えちまう…でもそれって他人の型を借りようとしてる同じ行為なんだ。自分は何ができるか考えなかった。お前もそうなんじゃねえの?」

澄子「……」

出雲「アイツらにケンカ売ってるお前は「お前自身」か?手震えてたぞ。本当は怖かったんじゃねぇのか。無理してんじゃねぇのか。」

澄子「……」

出雲「自分をガマンして真似すんの辛いよな。お前だってゴロツキなところに憧れたわけじゃないだろ。そのひとにならなくていいんだ。憧れを抱いたまま自分らしく生きるんだ」

澄子「お……じゃない。私そんな風に見えてましたか……確かにゴロツキになりたい訳じゃない……あのひとの優しさに近づきたいんです」

出雲「ほっ」

澄子「あと、あなたのまっすぐさにも近づきたいって思いました。」

出雲「そっか」

澄子「つらい思いして夢を追いかけるところでした……」

出雲「おっ、夢って何?」

澄子「今しるばーあくせさりーが気になってて…あと!」

きっとこれであってる。

これがきっと俺なりの答え。

俺も少しは前に進めたかな……?




ー福太郎の部屋ー

福太郎「んんーはぁ、ええ天気やな」

クロ「そうだな。っていうか、お前出かけてたんじゃないのか?」

福太郎「いってきたよ。ちゃんとお土産も渡して挨拶したし」

メリー「それだけ?お話ししなかったの?」

福太郎「それはまた改めてかな」

すっきー『改めて?』

福太郎「色々いそがしそうやったんよ。」

クロ「ふーん……」

福太郎「それより、ケーキ食べよか。せっかく買ってきたんやし」

メリー「ケーキケーキ♪」

クロ「甘いのはなぁ…」

福太郎「コーヒーをめっちゃ苦ぁにする?」

クロ「身体に悪そうだから嫌だ」
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