第禄夜『福太郎の不思議な日常』

ー遊霊団地:百鬼襖の部屋ー

出雲「本っっっ当何してんだよ!!」

澄子「むすっ」

出雲「世間知らずなの差し引いても失礼すぎるだろ!!それともアレが人魚の挨拶なのか!!」

澄子「ちっ、違うも…違ぇよ!!あいつらがケンカふっかけてきたんだ……」

あーもう福太郎さんだったらこんなとき……

出雲「それ……本当になんなんだよ映画かなんかの真似してんのか?」

澄子「そんなんじゃ……アレ?言ってなかった?」

出雲「えっ何を?」

澄子「ああじゃあいうけど」

出雲「……おう」

ほんのちょっと昔……

澄子はもともと静かな海で暮らしていた。

そのときは数年に一度あるかないかの大嵐で澄子は波にさらわれ浜に打ち上げられた。

陸にあがる練習もしてない人魚が陸で生きられるはずない。薄くなっていく意識の中……

『おい大丈夫か?』

その人間はゴロツキだったけど妖怪の澄子を気味悪がらず助けてくれた。

澄子「わた……俺はその人の優しさにとてもあこがれた。あの人の真似をしているんだ。」

憧れか……でもそれって何かおかしくないか?

どこか引っかかりを覚えつつ、その話しはソレで終わりにした。

~~

出雲「それにしても……」

澄子「ん?」

部屋の中にパラパラと散らばるものに掃除機をかける。

出雲「お前すげえウロコ落ちんのな」

澄子「あ悪ィ……」

出雲「悪いと思ったら手伝えよ!!」

ピンポーン!!

澄子「なんの音だ?」

出雲「誰だ……あーもーハイ!どちらさま!!」

福太郎「どうも。」

出雲「福太郎……さん」

福太郎「夜彦くんからの伝言ついでに来てみたんよ。調子はどう?はい、これお土産。」

出雲「ま、まぁ……えっと伝言……?」

福太郎「ん、ええと……」


~~

出雲「そっかあいつ向こうに帰ったのか」

福太郎「んっ、またこっちに戻ってもくるて。こっちにもう一度来たら、キミに一番にあいに行くってさ」

出雲「夜彦かぁ……合わせる顔がねぇや…」

福太郎「ん?」

出雲「あいつに迷惑かけておいてアンタに全部押し付ける形になっちまった……今さらどんな顔で会えばいいのか…今じゃ自身もポッキリ折れてアンタだったら…ってばかり考えちまう。アンタにはわかんねぇと思うけど……」

福太郎「そんなことないですよ。俺はどっちかいうたらロクデナシの人間やし。今のことやって流されて流されてやっとるだけで……自分の考えでちゃんと妖怪に向き合えんかったんをたまーに後悔しとる。間違っとっても怖ぁてもきっと自分で動くべきやって思った。夜彦君もたくさん悩んだんやろうけど最後は自分が思った通りに行動した。俺は少しお手伝いしただけや。」

出雲「……そっか」

福太郎「出雲君?」

出雲「今の俺まま会うわけにはやっぱりいかねえよな。俺、戻るわ!!お土産ありがとな改めて礼にいくわ」

福太郎「んっ、ほな。頑張って」

あいつ(夜彦)が前に進んで俺が前に進んでないわけにはいかないよな。
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