第禄夜『福太郎の不思議な日常』
ー池袋:大学病院ー
けたたましい足音とともに病室のドアが勢いよく開いた。
イト「あら、いらっしゃい夜彦」
にっこりと笑って夜彦を見つめる。その表情は穏やかそのものだ。
夜彦「はーはー……」
イト「そんなに急いでどうしたの?さてはまた怪我して慌ててきたな。よっこいしょ、薬塗ってあげるからお座り」
イトお婆さんは横になっていたベッドから身体を起こして塗り薬を手に取る。
夜彦「っ……」
イト「走らなきゃいけないくらい痛いのかな?ねぇどうしたの」
夜彦「ババァ死ぬのか?」
イト「え……?」
夜彦「イシャってヤツから聞いたぞ……!!」
~~
柳『イトさんの容態がおもわしくない……この夏を越せるかどうか…』
~~
夜彦「おい、どうなんだよ!聞いてんのか!!」
イト「……」
返事はない。
夜彦「おい!」
イト「いやよね本当!!歳には勝てないって本当よね!!しわしわになるし足も弱くなるし腰も曲がってきちゃうし、えっとあと、あと体力……だって…………」
いつもの調子で明るく努めていたイトの声がドンドン小さくなる。
夜彦「……」
イトはそっと手を伸ばして夜彦の手を握った。
イト「あ、あのね夜彦…私心配なのよ」
夜彦「しん、ぱい?」
その顔は櫛を壊した時にも見せなかった、弱弱しい顔だ。
イト「夜彦は自分のことばかりでいつかひとりぼっちになるんじゃないかって……」
夜彦の脳裏にまた言葉がフラッシュバックする。『いずれ誰も彼も愛想を尽かしてひとりになるぞ』兄がいっていた言葉だ。
夜彦「っ……!」
握られていた手を振り払って駆けだした。理由は分からない、だがどうしてもここにはいられなかった。
夜彦が出ていってしまったあとイトは椅子におかれた鉢植えをみた。何かが挟まっていてそれを手に取ると【くし悪かった。ずっとここにいろよ】そう荒々しい字でかかれた紙。
イト「私だって居られるものならずっとココに居たいのよ……」
ー福太郎の部屋ー
一週間前から夜彦君は家から出なくなった。口数も少ないしとても疲れているように見えた。
福太郎「最近お婆さんのところにいっとらんのとちゃうん?」
夜彦「なぁ歪屋」
福太郎「ん?」
夜彦「その死ぬってどういう意味だ?」
福太郎「んー……色々あると思うけど心臓が止まって冷たぁなって二度と会えへん。それが死ぬってことやないかな」
夜彦「……二度と会えねぇのか……」
福太郎「夜彦君?」
夜彦「ババァの心臓の音ずいぶん小さくなってるし、俺の耳でも聞き取りにくくなってる」
福太郎「まさかお婆さんになんか?」
夜彦「ダメだやっぱりちょっと行って来る!!」
福太郎「夜彦君!!」
ー池袋:大学病院ー
病室の中からでも聞こえる大きな足音にイトは閉じていた目をそっとあけた。
イト「あら、いらっしゃい夜彦」
ベッドに横たわるイトの頬はこけ、ただでさえ細く小さかった身体がさらに小さくなっていた。いままでのように身体を起こそうともしない。
夜彦「はぁはぁ(数日会わなかっただけでこんなに痩せるなんて…)」
看護師「こらっ、もう少し静かに!」
イト「いいのよゴホッ二人っきりにしてくれるかしら?」
看護師「……何かあったら呼んでくださいね」
けたたましい足音とともに病室のドアが勢いよく開いた。
イト「あら、いらっしゃい夜彦」
にっこりと笑って夜彦を見つめる。その表情は穏やかそのものだ。
夜彦「はーはー……」
イト「そんなに急いでどうしたの?さてはまた怪我して慌ててきたな。よっこいしょ、薬塗ってあげるからお座り」
イトお婆さんは横になっていたベッドから身体を起こして塗り薬を手に取る。
夜彦「っ……」
イト「走らなきゃいけないくらい痛いのかな?ねぇどうしたの」
夜彦「ババァ死ぬのか?」
イト「え……?」
夜彦「イシャってヤツから聞いたぞ……!!」
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柳『イトさんの容態がおもわしくない……この夏を越せるかどうか…』
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夜彦「おい、どうなんだよ!聞いてんのか!!」
イト「……」
返事はない。
夜彦「おい!」
イト「いやよね本当!!歳には勝てないって本当よね!!しわしわになるし足も弱くなるし腰も曲がってきちゃうし、えっとあと、あと体力……だって…………」
いつもの調子で明るく努めていたイトの声がドンドン小さくなる。
夜彦「……」
イトはそっと手を伸ばして夜彦の手を握った。
イト「あ、あのね夜彦…私心配なのよ」
夜彦「しん、ぱい?」
その顔は櫛を壊した時にも見せなかった、弱弱しい顔だ。
イト「夜彦は自分のことばかりでいつかひとりぼっちになるんじゃないかって……」
夜彦の脳裏にまた言葉がフラッシュバックする。『いずれ誰も彼も愛想を尽かしてひとりになるぞ』兄がいっていた言葉だ。
夜彦「っ……!」
握られていた手を振り払って駆けだした。理由は分からない、だがどうしてもここにはいられなかった。
夜彦が出ていってしまったあとイトは椅子におかれた鉢植えをみた。何かが挟まっていてそれを手に取ると【くし悪かった。ずっとここにいろよ】そう荒々しい字でかかれた紙。
イト「私だって居られるものならずっとココに居たいのよ……」
ー福太郎の部屋ー
一週間前から夜彦君は家から出なくなった。口数も少ないしとても疲れているように見えた。
福太郎「最近お婆さんのところにいっとらんのとちゃうん?」
夜彦「なぁ歪屋」
福太郎「ん?」
夜彦「その死ぬってどういう意味だ?」
福太郎「んー……色々あると思うけど心臓が止まって冷たぁなって二度と会えへん。それが死ぬってことやないかな」
夜彦「……二度と会えねぇのか……」
福太郎「夜彦君?」
夜彦「ババァの心臓の音ずいぶん小さくなってるし、俺の耳でも聞き取りにくくなってる」
福太郎「まさかお婆さんになんか?」
夜彦「ダメだやっぱりちょっと行って来る!!」
福太郎「夜彦君!!」
ー池袋:大学病院ー
病室の中からでも聞こえる大きな足音にイトは閉じていた目をそっとあけた。
イト「あら、いらっしゃい夜彦」
ベッドに横たわるイトの頬はこけ、ただでさえ細く小さかった身体がさらに小さくなっていた。いままでのように身体を起こそうともしない。
夜彦「はぁはぁ(数日会わなかっただけでこんなに痩せるなんて…)」
看護師「こらっ、もう少し静かに!」
イト「いいのよゴホッ二人っきりにしてくれるかしら?」
看護師「……何かあったら呼んでくださいね」