第禄夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「ほんで、人間と幽霊の間に子供はでけるんかって話になったんですよ」

ラム「……はぁ」

福太郎「で、答えが無いのに話しあっててもらちあかんてことで改めてしってそうな人に聞こうと思ってチンチンさんに来てもろたんやけど」

ラム「ラム」

福太郎「どうなんでっしゃろ?」

ラム「……端的にいえば出来なくはないわ」

クロ「マジか」

ラム「あぁ、でも幽霊が生むっていうのは違うかしら……」

福太郎「ん?」

ラム「子育て幽霊の話は知ってる?」

福太郎「えーと、うっすらとは……確か……」

ある夜、店じまいした飴屋の雨戸をたたく音がするので主人が出てみると、青白い顔をして髪をボサボサに乱した若い女が「飴を下さい」と一文銭を差し出した。

主人は怪しんだが、女がいかにも悲しそうな小声で頼むので飴を売った。 翌晩、また女がやってきて「飴を下さい」と一文銭を差し出す。

主人はまた飴を売るが、女は「どこに住んでいるのか」という主人の問いには答えず消えた。

その翌晩も翌々晩も同じように女は飴を買いに来たが、とうとう7日目の晩に「もうお金がないので、これで飴を売ってほしい」と女物の羽織を差し出した。主人は女を気の毒に思ったので、羽織と引き換えに飴を渡した。

翌日、女が置いていった羽織を店先に干しておくと、通りがかりのお大尽が店に入ってきて「この羽織は先日亡くなった自分の娘の棺桶に入れたものだが、どこで手に入れたのか」と聞くので、主人は女が飴を買いにきたいきさつを話した。

お大尽は大いに驚いて娘を葬った墓地へ行くと、新しい土饅頭の中から赤ん坊の泣き声が聞こえた。掘り起こしてみると娘の亡骸が生まれたばかりの赤ん坊を抱いており、娘の手に持たせた三途の川渡し代の六文銭は無くなっていて、赤ん坊は主人が売った飴を食べていた。

お大尽は、「娘は墓の中で生まれた子を育てるために幽霊となったのだろう」と「この子はお前のかわりに必ず立派に育てる」と話しかけると、娘の亡骸は頷くように頭をがっくりと落とした。この子供は後に菩提寺に引き取られて高徳の名僧になったという。

メリー「怖い話しかと思ったらいい話なのね。」

福太郎「あらすじってこんな感じでしたよね?」

ラム「そこまでしっかり覚えてたらあらすじっていうか語り手になれるわよ」

福太郎「いやぁ、俺は稲川さんにはなれませんて」

クロ「怪談の語り手=イナガワジュンジなのか……」

ラム「ちなみに飴買い幽霊っていわれることもあるでしょ?中国だとそっちの方がポピュラーで内容もちょっと違うのよ……」

ある民家で、妻が妊娠中に死亡し、埋葬された。その後、町に近い餅屋へ、赤ちゃんを抱えた女が毎日餅を買いに来るようになった。

餅屋の者は怪しく思い、こっそり女の服のすそに赤い糸を縫いつけ、彼女が帰ったあとその糸をたどってゆくと、糸は草むらの墓の上にかかっていた。知らせを聞いた遺族が墓を掘り返してみると、棺のなかで赤ちゃんが生きており、死んだ女は顔色なお生けるがごとくであった。

女の死後、お腹の中の胎児が死後出産で生まれたものとわかった。遺族は女の死体をあらためて火葬にし、その赤児を養育した。

すっきー『こっちは両方とも死んじゃうんですね。』

福太郎「つまり……妊娠中に死んでしもうたら生まれる事があると」

ラム「まぁ、今の世の中ならそんなことになる前に取り出す手立てはいくらでもあるだろうけどね。」

クロ「つまり「幽霊」になったら子供は出来ないってことか結局」

ラム「私の知る術では無いと思うけど、できなくもないと思うわよ。あまりいい事ではないと思うけれど……まぁでも、だいたいは幽霊にそんなことをしようとしたらとり殺される落ちでしょう」

福太郎「なるほど……ほんなら逆もないんやろか」

ラム「逆?」

福太郎「幽霊が子供を成すんやなくて、人間が幽霊の子供を成す」

ラム「そういうのは水子が憑いてるっていうんじゃないかしら。あぁ、でも淫霊とり憑かれてそういう事をして子供ができちゃうなんて事はあるかもね。」

福太郎「一気にアダルトゲームとかみたいな話になったな」

ラム「アンタが話題振ったんでしょ!」
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