第伍夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「毎日暑いなぁ」

悠「んだべなぁ」

恋「暑いというのなら涼しげな恰好をせんか」

悠「してるじゃん、この前面に泳いでる金魚とその先を泳ぐ蛙の刺繍。実に夏らしくて涼やかだろ」

福太郎「せやけど生地の色は」

悠「漆黒!」

恋「黒というので暑苦しいわ」

悠「言われてるぞクロ」

クロ「私のことじゃねーよ」

福太郎「せやけど、悠の服は毎回バラエティにはとんどるよな。金魚、蛙、般若、龍、鳳凰etc.」

恋「まるでチンピラじゃ」

悠「なんだよー、自分はキャバクラのねーちゃんが着そうな着物着てる癖に」

恋「蹴り飛ばすぞ!」

クロ「でも、間違ってねーからなその例え」

福太郎「でも、悠は好きそうやん」

悠「祭りとかで見たらアホかこの女って思うけど恋ならまぁ、許せるかな」

恋「な、なぜじゃ?」

悠「おれの所有物だしな。仕方ないと目をつぶってる」

恋「……」

ゲシッ!
悠「痛い」

クロ「無表情で痛がるな……不気味だ」

福太郎「不気味言うたら、そろそろ怪奇特集とかの番組せーへんかな」

悠「まだ早くね?」

福太郎「せやろか」

メリー「ご主人様、楽しみにしてるの?」

福太郎「そこそこには」

悠「おれもけっこう楽しみにしてる。でも、ああいうのってみても涼しくはならないんだよな。笑いつかれて」

恋「おかしいじゃろ!」

悠「だって……笑うだろ」

福太郎「分からんでもないけど」

クロ「なんで若干共感出来るんだよ」

福太郎「だって、最近のホラー映像とかってハッキリ見え過ぎとるし」

悠「襲い掛かってくる幽霊とか超肉々しいもんな」

クロ「にくにくって……どんな例えだ」

悠「んーと、幽霊っぽさは出してるけど肉づきが健康的というか」

恋「そんなことをいったら女狐とかはどうなる。」

悠「揺光は狐だろ」

クロ「りんねは?」

悠「…………りんねてんてーは生きてるし……たぶん、きっと……」

福太郎「まぁ、どっちにしても健康への気遣いはひと一倍……いや、三倍くらいはしとるよね。」

悠「だよな……たまにあの人の三食のメニューとか聞くと健康食で引くもん」

恋「対して悠はもう少し気を使え」

悠「でも、こう見えておれはγGTPとか正常値だべ?」

福太郎「測ったことあるん?」

悠「おれの知らないうちに検査とかよくされてるんだよ。」

クロ「なにそれ、怖ぇ」

福太郎「悠はまだまだ若いもんな」

恋「福太郎とて十分若い方じゃろ」

福太郎「いや……んー、どうやろ……」

恋「そこで考えるな……」

悠「まぁ、これだけ怪異に囲まれて病まないんだから健康だろ福ちゃんも」

メリー「私たちはバイキンじゃないわよ!」

悠「いや、でも……普通は心とかを病ましていくのが妖怪幽霊の所業じゃね?」

クロ「それはそういうのの専門妖魔がいるんだよ。」

福太郎「んっ、せやけど、すっきーは驚かそうとしてきたし、メリーちゃんは殺しにかかって来たし、クロはたかってきたし」

クロ「たかりって言うな!」

悠「恋は……なんだっけ?」

恋「座敷童子じゃ!」
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