第伍夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋界隈ー

小鞠「はああぁぁ……」

今日も失敗ばかりだった。時間が経つほど人間との違いを痛感させられる。

実家に帰ろうかな。限界な気がする……。

カズヤ「小鞠ちゃん」

小鞠「ん?」

カズヤ「あぁ、やっぱり小鞠ちゃんだ!」

小鞠「(うわぁあああカズヤ君!!気まずい!私だけが!)えっと、こんにちは」

カズヤ「いいところに!今度福太郎の家で焼き肉パーティするんだ。小鞠ちゃん、まだ福太郎の所の隣の部屋にいるよね?」

小鞠「(この場から逃げ出したい…)分かんない、仕事うまくいかなくて近いうちに実家帰るつもりで……」

カズヤ「えっ大丈夫?愚痴なら聞くよ?ストレスのため過ぎよくないし!」

小鞠「あ、あはは……」

押し切られる形で近くの公園でパイプベンチに並んで座った。

カズヤ「モデルは向こうで頑張るの?」

小鞠「あ……えっと、もでるも諦めようかとおもってて…」

カズヤ「え?」

小鞠「働くのは好き!……でも、人間の考え方が少し合わなくて」

人間(こっち)の世界に不信感を抱いたまま笑顔になれない。夢を追えない。

カズヤ「……」

小鞠「夢は諦めたくないけど、人間と妖怪の壁が越えられない。お互い理解できなくて生き辛い」

カズヤ「……軽蔑されるの覚悟で言うけど。正直、いけないと思った事でも人に注意すんのって嫌だったんだ。」

小鞠「ムッ」

カズヤ「なんで俺が赤の他人に言わなきゃいけないんだって思ってたし、俺じゃなくても誰かが言うだろとか、自分にいいわけしながら本当は関わるのが面倒だったんだ」

小鞠「……」

カズヤ「でもさ目のまえでボロボロになっても正しに従ってる女の子を見てめんどくさいとかなんか違うだろって思った。小鞠ちゃんのおかげで変わろうと思えた俺が居るんだ。」

小鞠「……」

カズヤ「ありがとう」




ー福太郎の部屋ー

福太郎「女の子には女の子の元気になるタイミングがある……か。」

クロ「そんなもんかねぇ」

ドダッバタバタ!
小鞠「ただいまーー!!」

福太郎「うぉ…お、おかえり……」

小鞠「私ね!今すごく力が湧いてるの!私でも誰かを変えられると思ったら何でもできる気がするの!!私諦めないわ!ばいとももでも諦めないカズヤ君のハートもいつか盗んでみせる!全部諦めないわ!」

りんね先生のいっていた通り女の子はパワフルで不思議でした。

福太郎「でも盗んじゃダメなんじゃ…」

小鞠「好きな人の心は盗んでもいいんですー」



そうして絶対に諦めない宣言から2週間……

小鞠の努力が実を結びついに雑誌に載ることができたらしい。向こうに一回戻り両親に報告した後……本格的に現代でのモデル活動が始まった。

「全部諦めない」と言ったのが現実となった。

確かに人間と妖怪は違う。その差を埋めて自分を納得させるのは難しい。

けれど好きなものや人を思う気持ちは何より強い。

そのエネルギーがあれば何でもうまくいく気がしている。

クロ「そういや、カズヤとはどうなったんだ?」

福太郎「メル友から始めとるみたいやで……相思相愛やのに回りくどいよなぁ」

クロ「ふーん……は?ソウシソウアイ?」

福太郎「んっ、言わんかったけ?カズヤはコンビニで小鞠ちゃん見かけた時に惚れたらしいで」

クロ「なんで……いってやらなかった?」
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