第伍夜『福太郎の不思議な日常』

ーとある山の中腹ー

悠「なかなか良い眺めだな。」

福太郎「せやね。ええ感じっぽい」

悠「……ん?ええ感じっぽいって来たことあるんじゃないのか?」

福太郎「んーん、初めて。」

悠「野生的だな」

福太郎「そうでもないよ。歩いていけて近い場所を選んだ結果や」

悠「なるほど」

福太郎「んで、俺は今から適当なところで絵描くけど悠はどうするん?」

悠「……どうしよう」

福太郎「わぉノープラン」

悠「考えなしといってくれてもいい」

福太郎「で?」

悠「しばらく福ちゃんとトークしてそこらで寝てるわ」

福太郎「大胆やな」

悠「緑に囲まれて眠ってリフレッシュってよくね?」

福太郎「悪うはないね。」

悠「もしくはどっかに幼女が落ちてないか探す」

福太郎「山で落ちとるかな」

悠「んー、腐乱死体的なので落ちてたらヤダな」

福太郎「幼女でも?」

悠「ゾンビ幼女はちょっとなぁ」

福太郎「外傷はなく、噛みつきもしない、ちょっと肌色が悪い程度なら?」

悠「全然セーフだ」

福太郎「そすが悠、パナイな」

悠「そういうけど、福ちゃんの隣にだってゾンビ的なのいるじゃん」

福太郎「ゾンビ淑女」

悠「淑女か?アレは恥女だろ」

福太郎「ハッキリ言うたらダメやろ。そういう部分を覗いたらええ人やん」

悠「この夏で腐らないといいけどな」

福太郎「んー……防腐剤かな?」

悠「いっそ冷凍庫にいれとくとかどうだろうか」

福太郎「アカンやろ。あの人、アレでインドアやなくて結構アウトドアやし。」

悠「だよな。だから、事故率増えるんだけど」

福太郎「せやねー。」

悠「ふぁぁ……」

福太郎「もう欠伸?」

悠「太陽が出てると眠くなるべ」

福太郎「生活リズムガッタガタ?」

悠「ガッタガタ」

福太郎「あっ、幼い子」

悠「んっ?」

福太郎「そこには反応するんやね」

悠「福ちゃんも人が悪い」

福太郎「いや、ほら、幼虫のことね」

青虫『……』
うごうご

悠「アゲハ蝶の幼虫を幼い子なんて言うひと初めてだわ」

福太郎「これアゲハの幼虫なんや」

悠「腹脚の上に白線があるだろ。これがナミアゲハの特徴だ。あと臭角が黄色。クロアゲハだと臭角が紅色だ。」

福太郎「ほうほう、女の子が見たら悲鳴あげるよな」

悠「いまどき芋虫で悲鳴あげる純情な女の子なんているか?」

福太郎「芋虫は平気かな。ゴキブリとか?」

悠「ムカデじゃね?」

福太郎「ムカデは大の男でも悲鳴あげるで毒あるし」

悠「頭に落ちて来て噛まれたら一大事だからな。しかも、あいつら人間恐れないし」

福太郎「全身から強いオーラがあふれ出とるもんな」

悠「なにげに硬いしな。身体切断してもしばらく動きまわるし」

福太郎「ムカデ怖いなぁ」

悠「怖いなぁ」
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