第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

ぷるる!ぷるる!
悠「はい、もしもし」

福太郎「悠、人ン家にかかってきた電話に出んといてや…」

悠「しっ……」

福太郎「ん?」

『もしもし?わたしメリーさん、今からアナタのお部屋に行くわ。待っててね。』

悠「また、お前か……待ってます」

『間違えました』

プッ……ツーツー…

悠「……福ちゃん、コールして」

福太郎「……」

ぴぽぱぽ……ガチャ!

福太郎「もしもし?俺、福太郎。今自室に居るぽい」

『かけ直してこないでちょうだいっ!!!』

悠「お、繋がったか」

『なんで違う番号なのに、またあなたにかかるのよ!?』

福太郎「いや、冥界から間違い電話が多いから番号変えたんよ」

悠「福ちゃん、代わって」

福太郎「んっ」

悠「ちっとも反省して無いようなので悪い子には今からお仕置きに行きます」

『来なくていいから!!』

悠「今から行きます。必ず行きます。待ってイロ。」

プッ……つーつー…





ー廃病院ー

メリー「ゾッ……ば、場所分かるわけ無いじゃない。ケータイだし。……分かんないわよね?」

ぴりりりっ!
鳴り出した携帯の受話ボタンを押した。

『もしもし?おれら、悠&福太郎。今アナタの五十メートル以内に居ます』

メリー「いきなり近いわよっ!!」

『くくくっ……。』

プッ……ツーツー

メリー「嘘よね?ハッタリよね?」

コッン……背後で音がした。ただの気のせいかもしれない。だが、メリーはその場から走りだした。直後に携帯が鳴る。鳴り続ける携帯を無視して、当たりを見まわして掃除用ロッカーの小さなすき間から中へと飛び込んだ。目を閉じて、両手で耳をおさえて携帯電話が鳴りやむのを必死に待つ。ピリリリ……ピッ!

悠「もしもし、おれ、小鳥遊悠。今アナタの目のまえに居ます!」

頭の上から振ってくる声に顔を向けるとありえないことに空間から首だけの男が大口を開いて噛みついてきた。

メリー「き、きゃあぁぁ!!」

バクン!!




ー福太郎の部屋ー

悠「んー……んっ!」

紫「あら、お人形に喰らいつくなんてなかなかハードコアなプレイね」

福太郎「いやー……しかし、ようやるわ。」

すっきー『福太郎さんの霊探知と紫さんの隙間能力で家に居ながら心底ビビらせるんですから』

福太郎「紫さん、なんやお手数おかけしました」

紫「うふふ、面白かったから良いわよ。じやあ、またね」

悠「ぺっ……さて、悪い子にはこれからおしおきだな」

テープに吐き出されたメリーは唾液でべとべとだ。

ようよう「……それ以上にか?」
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