第伍夜『福太郎の不思議な日常』

ー太陽の畑ー

福太郎「ふー……」

幽香「ちょっと」

福太郎「ん?」

幽香「はい」

福太郎「はい?」

幽香「灰。吸い殻を落とさないでもらえないかしら?さもないとあなたも消し炭にするわよ。」

福太郎「代償バイオレンス…。」

幽香「ん?」

福太郎「すんません。すぐに片します」

幽香「口で丁寧に舐めとりなさい」

福太郎「なんと……」

幽香「冗談よ」

福太郎「一切冗談に聞こえんかったんですけど」

幽香「ん、なぁに?」

ずひゅん、ずひゅん!
福太郎「なんでもないですから、日傘を上下にスイングせんといてください。風圧が凄いです。真空刃が生まれそうな音してまっせ。」

幽香「ていうか、あなたさっきからもう風景見ずに描いてない?」

福太郎「ある程度、描き終わったんでもうあとはイケるんよ。でも、速描はやっぱり合わんなぁ。できはちょい悪い」

幽香「人の渡すものをそういう風に仕上げるとは見上げた根性ね」

福太郎「そういう訳やないんですけどね……何て言うか上手に描こう。頑張ってええもん渡したげようって気持ちが先走ってしもてちょっとから回ったかなみたいな事に……」

幽香「言い訳がましい」

福太郎「はい、その通りですスンマセン。」

幽香「まったく、自分が描いたものなら自信を持って胸張りなさいよ」

福太郎「いやー、俺はそういうキャラやないんで」

幽香「確かにそうね。」

福太郎「でしょー」

幽香「そろそろ日が暮れるわね。」

福太郎「日が落ちる前までには完成しますわ。あー、でも……」

幽香「でも、なによ?」

福太郎「夕暮れになってからのひまわり畑ってええなぁ。んー、ちょっと変更しょうかな。」

幽香「……何だかんだで画家なのねぇ」

福太郎「まさか、ただの趣味やで。坊主が屏風に坊主の絵描いた……って、ことや。」

幽香「まったく意味が分からないわ」

福太郎「せやねー……っと、こんなもんかな」

咲夜「お疲れ様です」

福太郎「うわぁ、びっくりした」

咲夜「……全然驚いたように見えないのですけど?」

幽香「コイツは驚きの感情だけ起伏が薄いのよ」

福太郎「いや、そんなことないですよ?」

幽香「あるわよ」

福太郎「んー、そうやろか。めっちゃ驚いたんやけど」

咲夜「まぁ、ともかく完成したようですね。」

福太郎「んっ、まぁ、完成したようです。」

フラン「わーい、フクタロー。ありがとー。」

福太郎「んっ、いえいえ。べつにええですよー。レ嬢には昼ごちそうになったし」

咲夜「あなたドンドンとお嬢さまの名前を短くしていくわね。もう、ひと文字しか残ってないわ。」

幽香「「嬢」のほうが多いわね。」

福太郎「俺はもう博麗神社に行くんで「れ嬢」にお礼言うといてください」

フラン「えぇ、しっかりと「レ嬢」に言っとくわ」

幽香「レ嬢が定着してるわね。」

咲夜「これもお嬢さまの人徳がなせることですね。」

幽香「人徳が無いって意味ではその通りね。」
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