第肆夜『福太郎の不思議な日常』

ー紅魔館:庭ー

魔理沙「よっと、とりあえず着地だぜ」

福太郎「ここって、思いっきり誰かの所有地とちゃうん?」

魔理沙「ちっさくて偉そうな吸血鬼の館だぜ」

福太郎「紅い館でちいちゃくてえらそうな吸血鬼が屋主……レミリア嬢?」

魔理沙「なんだ、知ってるのか」

福太郎「んっ、ウチに来たことある」

魔理沙「ふーん」

福太郎「せやけど、勝手に入るんはまずいんとちゃう?」

魔理沙「細かいこと気にするヤツだな」

福太郎「不法侵入を細かいことなんかな……?」

魔理沙「それにあっち見てみろよ。門番があんなだから入られたって仕方ないんだぜ」

魔理沙が指さす方に振り返ると、緑をメインカラーにしたアオザイ風の服を着た女性が立っていた。

福太郎「……えっ、寝とる?」

魔理沙「そうだぜ」

パッと見、腕を組んでズンっと仁王立ちしているように思ったのだが、一定の呼吸に合わせて鼻提灯が膨らんではしぼみ、膨らんではしぼみしている。

福太郎「器用なもんやけど防犯としては筒抜けやな」

魔理沙「中国は起きてる方が逆に珍しいのぜ」

福太郎「中国さん?」

魔理沙「アイツの名前だよ」

福太郎「ふぅん……」

魔理沙「ま、いいから中に入ろうぜ」

福太郎「ほな、せっかくやからレミリア嬢とパチュリーさんに挨拶してこか」

魔理沙「律儀なヤツだな」





ー紅魔館:ホールー

福太郎「ん?」

魔理沙「どした?」

福太郎「んー、なんか広うなってない?外から見た感じと中が微妙に体積がちゃうような」

魔理沙「それはメイドのの力だよ」

福太郎「メイド?」

「メイド長ですわ」

魔理沙と話していると急に誰も居なかったはずの場所に突然女性が現れていた。

福太郎「んっ?」

魔理沙「ほら、噂をしたら嗅ぎつけてきたぜ」

「えぇ、泥棒ねずみを狩るのも仕事だからね」

にっこりとほほ笑むメイド長さんは魔理沙にきらりと光るナイフを突き付けた。あの輝きは偽物ではなく本物のナイフだろう。

魔理沙「落ち着け、私は泥棒でもネズミでもない。ネズミなら命蓮寺にいるだろ。」

福太郎「本を持っていくんは泥棒やで?」

魔理沙「借りてるだけ、借りてるだけだぜ。そうじゃなくて……ほら、レミリアに客だぜ」

「そういえば……アナタは?」

福太郎「御堂福太郎いいます。現界に住んでて、レミリアお嬢さんとは一度あっとるんやけど」

咲夜「まぁ、アナタが噂の……。お話しはお嬢様とパチュリー様から聞いております。私は十六夜咲夜、どうぞ。お嬢さまの元にご案内します。」

福太郎「んっ、どうも」

魔理沙「じゃ、私は図書館の方にいってくるぜ」

福太郎「泥棒せんようにな」

魔理沙「だから借りてるだけだぜ」
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