第肆夜『福太郎の不思議な日常』

ー廃寺ー

パチュリー「些細な負傷があったけどこれで準備はできたわ」

福太郎「げほっげほっ……生臭っ味マズ…」

クロ「気にしないで続けてくれ」

パチュリー「はぁ……始めるわ」

そういうとパチュリーは空中に魔法陣を描いた。文字通り空中にだ。CGのように空間をキャンバスに光の線で描かれていく形や文字。

福太郎「ラムさんも封印とか道術つかう時はあんな感じなん?」

ラム「まさか……お札に火を着けたりは出来るけど、あんな魔法魔法したのは初めて見るわ」

福太郎「そうなんや。……んっ、そういえばクロってなんか特殊能力あるん?」

クロ「コックリさんできるだろ」

福太郎「……」

クロ「おい、なんだその目は!私は中が出来るとかじゃなくて神だからな!」

ラム「神だったの?」

福太郎「ワンちゃんや」

クロ「黙れ」

っと、そのとき、棺から黒い靄のようなものが溢れだしはじめた。

福太郎「ん?」

ラム「出たわ、邪気よ。」

クロ「うぶっ……」

福太郎「どないしてん?」

クロ「臭い……半端なく嫌なにおいだ」

福太郎「夏場の三角コーナーとどっちかキツイ?」

クロ「……とんとんかな」

福太郎「それはきつそうやな」

ラム「どんな例えよ……」

こっちで話している間にも黒い靄は溢れ出続けて徐々にパチュリーの方へと流れていく。慌てることなく彼女は詠唱を始めると、石がその靄を吸いこみだした。まるで掃除機で吸い取るようにドンドンドンドン速度があがっていき。邪気が無くなったころには石が真っ黒になっていた。

パチュリー「……終わったわ」

福太郎「おーすばらしい」

ラム「……たしかに、完全に邪気が無くなってるわ」

福太郎「んっ?わっ……」

棺を覗いてみると瑞々しかったキョンシーは干からびて一部腐食の進んだ死体に変わり果てていた。

ラム「本来はこれくらい年季が入ってたってことよ。蓋閉めて」

福太郎「んっ」

パチュリー「そっちはおわったわね。それじゃあ後はこの石をどうするかね。」

平然真っ黒になった石を持ちあげる彼女

福太郎「それ、触れて平気なん?」

パチュリー「私はね。」

福太郎「んー、俺は?」

パチュリー「触ってみたら分かるんじゃない?」

福太郎「んっ、なるほど」

スッ、ガシッ!
クロ「怖いもの知らずか!触ろうとすんなよ!」

福太郎「んっ、つい……」

クロ「ついって……」

ラム「このツボに入れて埋めましょう」

パチュリー「良い手ね」

福太郎「ええ手なん?」

パチュリー「無機物には取り憑けないから石に封じたのよ。さらにツボに閉じ込めて封印を施して地中深く埋めておいたらそのうち浄化されるでしょ。されなくても掘り起こして石をわりでもしない限りは漏れ出さないわ」

ラム「ということで、最後にもうひと働きしてちょうだい」

福太郎「ん?」

ラム「穴掘って」

福太郎「クロ」

クロ「もうわかってたよ……」
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