第肆夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

死体(キョンシー)と一晩追いかけっこして、廃寺で一夜を明かした福太郎一同はドッと疲れがこみ上げてきたので、近くで休める場所として夢見長屋までは帰って来た。

それに着いて来たチンチ……ラムも「昼間で寝させて」といって男の部屋とも気にせず、しかも床で死んだように眠った。また、福太郎もクロも自分の寝場所まで行くと同じように眠った。

それから昼過ぎになりようやく福太郎は眼を醒ます。

福太郎「んんーっ、はぁ~走りまわっての貫徹はキツイわぁ。俺ももう若ぁないんやな。」

メリー「ご主人様、二十代で何いってるの…」

福太郎「いや、ひと昔の自分やったら痛いテンションでフィバーしとると思って」

メリー「ご主人様が痛いテンションなところが逆に見てみたいわ……」

福太郎「ははっ。ってか、メリーちゃん起きとったん?」

メリー「私は昨日もぐっすり寝てたし」

福太郎「んっ、そうやったね。あんだけワイワイ騒ぎょったのに寝てたわ」

『あのー……』

福太郎「ん?すっきー?」

なぜか声はするが姿は見えない。ちらっといつも潜んでいる箪笥と箪笥の隙間を見ると一枚の黄色い紙が張り付けられている。

『あのー、これ……剥がしてもらえないっすか?っていうか、なんでこんなことされてんスか私?』

福太郎「いつのまに……」

メリー「さぁ、私が起きてみた時には貼られてたわ。私じゃ触れないから放置したけど」

福太郎「まぁ、そら仕方ないわな。ところで平気なん?すっきー」

すっきー『はい、出られないだけで問題は無いっす』

福太郎「ちなみに触ったらどうなる?」

すっきー『シャレにならないんでやめてくださいっス!』

ラム「んーっ……うるさいなぁ」

福太郎「あ、チンチンさん。おはよう」

ラム「おはよう……って、誰?!あとチンチンいうな!」

福太郎「誰て……」

ラム「んー?あっ、アンタか。そっか……休ませてもらってたんだっけ」

福太郎「起きぬけにアレなんですけど、なんでここに札貼りましたン?」

ラム「えっ?あー……なんでだっけ……?そうだトイレ行く時に何か霊の気配がしたから霊道でも通ってるのかと思って貼ったんだった」

福太郎「ここの隙間にウチの同居人が居るんで剥がさせてもらいますよ」

ラム「あら、そうなの。それは悪かったわね」

福太郎「いえいえ」

すっきー『はー、びっくりした。』

メリー「ご主人様、その紙をその辺に置かないで危ないわ」

福太郎「んっ、ごめんごめん」

ラム「字さえ滲んだりしたら効果はなくなるからもう平気よ」

福太郎「ふーん、そうなんや。」

ラム「ところで洗面所かりていい?」

福太郎「どうぞ。その間に軽食でも用意しますわ」

ラム「何から何まで悪いわね。」

福太郎「いえいえ」

クロ「ふぁぁっ。」

福太郎「クロ。起きたなら珈琲入れて」

クロ「寝起きに働かせるなよ……」

ラム「はー、さっぱりした。」

福太郎「……」

ラム「なに?」

福太郎「化粧ってすごいなー。ラム「さん」からラム「ちゃん」になっとる」

ラム「童顔で悪かったわね!」

福太郎「すっぴんでもそれやったら。十年後は誰よりも勝ちちゃいます?」

ラム「ロリババァ枠で勝ちたくないっ!」
76/100ページ
スキ