第肆夜『福太郎の不思議な日常』
ー廃寺ー
キョンシーA『……』
キョンシーB『……』
キョンシーC『……』
キョンシーD『……』
キョンシーE『……』
キョンシーF『……』
キョンシーG『……』
キョンシーH『……』
キョンシーI『……』
福太郎「ふー、俺らが連れてきたキョンシーが三体、もともと居ったキョンシーが六体、合わせて九体……一生に一度に九体もの死体と対面することやあるんやろうか」
クロ「はぁ……」
ラム「ご苦労様。じゃあ、後は私の仕事だから……休んでて」
そういってラムは何かしらの道具が並べられた祭壇(?)みたいな場所のまえに立つとライターで蝋燭に火を付けた。
福太郎「普通にライターとか使うんですね。」
ラム「当たり前でしょ。」
こっちには向かずに祭壇の上に置かれた小皿に赤い液体と黒い液体を注いでいく。
福太郎「それなんなんです?」
ラム「鶏血と墨」
言葉数すくなくそういうと米のような物を一粒指に乗せて、それを蝋燭の火の中に突っ込んだ。そして抜き取ると米粒は小さく着火していて、鶏血と墨を混ぜたものの中に投げ込む。発火物は入っていないはずなのにボウッと炎が揺らめいた。
それにまたも平然と指を突っ込んでかき混ぜ、火が消えると素早く八面鏡のような物で蓋をした。その前で手印(?)を行い。ゆっくりと八面鏡を外した。近くにあった筆を取ると中の液体につけて黄色の紙に呪文を書いていく。
何と書いているかは全く不明だがとてつもなく達筆ではあった。九枚書き終えた時点で筆を置いて。書いた札と今キョンシーに貼りつけてある札を張り替えていき、最後にやたら長い線香に火をつけて、これまた順々に供えて、ようやくひと作業終わったらしい。
福太郎「もう話しかけてええですか?」
ラム「えぇ。ようやく全部終わったしね。」
汚れた指を拭きながら近くの椅子に腰かけ、こっちにも椅子を渡してくれた。
福太郎「さてと、どこから聞いていこかな」
ラム「手伝ってもらったしなんでも話してあげるわよ」
福太郎「火の中に指突っ込んで熱うないんですか?」
クロ「そこかよ」
ラム「訓練のたまものよ」
クロ「そしてこっちも普通に応えるし」
福太郎「キョンシーを埋葬するんが仕事なん?」
ラム「本当は私は道長(どうちょう)なんだけど。大まかそれで間違ってないわ」
福太郎「どうちょう?」
ラム「道士っていうのは、体術と法術を修め、キョンシーに関係する仕事に従事するの、本当は義荘(ぎそう)に住んでキョンシーの供養を行って、時には風水や占術の相談も受け付ける一方で、人に害を及ぼすキョンシー退治を専門とする「霊幻道士」としての仕事なの。」
福太郎「ふんふん。」
ラム「っで、今言った「道長」っていうのは旅先なんかで死亡したひとに法術を施してキョンシーに仕立て上げ、それぞれの故郷へ送り届けるためにキョンシー隊を導く先達を専門とするのが「道長」っでも、今どきは旅先で死んだりとか人に害を及ぼすキョンシー退治なんて依頼は無いから……こうして無縁仏さんを埋葬するのをメインに仕事してるわ」
福太郎「なるほど……ほんなら義荘いうは?住んどるってここに?」
ラム「「義荘」っていうのは確かに道士の自宅であり、同時にキョンシーとなった人々を引き取って遺体と位牌を安置し、然るべき供養が行われる霊廟のことだけど、さすがに住んではいないわ。仮のキョンシー安置所、早い話しが霊廟として使わせてもらってるわけ」
福太郎「ラムさんていったい何歳ですのん?ようよう見たらずいぶん若い言うか幼い感じが……」
ラム「……二十三歳よ」
福太郎「ええっ?!俺と同い年?!」
ラム「うっさいわね!」
クロ「片や妖怪の世話。片や死体の運搬屋か」
ラム「葬儀プランナーの大学に通ってる大学生よ!死体運搬屋とかいうな!」
福太郎「しかも葬儀屋さんになるん?」
ラム「だって……住職とかにはなりたくないし」
福太郎「住職とか素晴らしいと思うんやけど」
ラム「イヤよ」
クロ「死体運びはいいのかよ」
ラム「バイト代わりよ」
福太郎「えらいバイトっすなぁ……」
ラム「うっさいわね。それじゃ次はそっちのこと話してもらおうかしら」
福太郎「越後のちりめ…」
クロ「歪業屋だよ」
ラム「あら、歪業の人らだったのね。どおりキョンシーとかに驚かないわけだわ」
福太郎「んっ、歪業のことはしっとるんや」
ラム「まぁね。私は「襖係(ふすまがかり)」もやってるからね」
福太郎「襖係?」
ラム「知らないの?!襖係は歪業を手伝う者のこと妖怪が現代に来る手続きをするのも自分勝手で現代に適さない妖怪を送り返すのも襖係の仕事なのよ」
福太郎「んー、そうなんや。ほんなら俺ら同業者関係なんやね」
クロ「それって鎮伏屋とはどう違うんだ」
ラム「鎮伏屋は完全なハンター。生け捕りとか捕獲して送り返すんじゃなくて完全に消滅、滅殺、成仏させる。要するに完全に人に害をなすレベルになった悪霊や化け物を討伐する事に特化してるのが鎮伏屋よ。霊幻道士のなかにはそっちを専門としてるのもいるけど私は何かそういうの肌に合わないし「道長」も「襖係」もバイトとしてやってるわ」
福太郎「……ところで凄いこというてええ?」
クロ「なんだ?」
ラム「なに?」
福太郎「夜が明けとる」
キョンシーA『……』
キョンシーB『……』
キョンシーC『……』
キョンシーD『……』
キョンシーE『……』
キョンシーF『……』
キョンシーG『……』
キョンシーH『……』
キョンシーI『……』
福太郎「ふー、俺らが連れてきたキョンシーが三体、もともと居ったキョンシーが六体、合わせて九体……一生に一度に九体もの死体と対面することやあるんやろうか」
クロ「はぁ……」
ラム「ご苦労様。じゃあ、後は私の仕事だから……休んでて」
そういってラムは何かしらの道具が並べられた祭壇(?)みたいな場所のまえに立つとライターで蝋燭に火を付けた。
福太郎「普通にライターとか使うんですね。」
ラム「当たり前でしょ。」
こっちには向かずに祭壇の上に置かれた小皿に赤い液体と黒い液体を注いでいく。
福太郎「それなんなんです?」
ラム「鶏血と墨」
言葉数すくなくそういうと米のような物を一粒指に乗せて、それを蝋燭の火の中に突っ込んだ。そして抜き取ると米粒は小さく着火していて、鶏血と墨を混ぜたものの中に投げ込む。発火物は入っていないはずなのにボウッと炎が揺らめいた。
それにまたも平然と指を突っ込んでかき混ぜ、火が消えると素早く八面鏡のような物で蓋をした。その前で手印(?)を行い。ゆっくりと八面鏡を外した。近くにあった筆を取ると中の液体につけて黄色の紙に呪文を書いていく。
何と書いているかは全く不明だがとてつもなく達筆ではあった。九枚書き終えた時点で筆を置いて。書いた札と今キョンシーに貼りつけてある札を張り替えていき、最後にやたら長い線香に火をつけて、これまた順々に供えて、ようやくひと作業終わったらしい。
福太郎「もう話しかけてええですか?」
ラム「えぇ。ようやく全部終わったしね。」
汚れた指を拭きながら近くの椅子に腰かけ、こっちにも椅子を渡してくれた。
福太郎「さてと、どこから聞いていこかな」
ラム「手伝ってもらったしなんでも話してあげるわよ」
福太郎「火の中に指突っ込んで熱うないんですか?」
クロ「そこかよ」
ラム「訓練のたまものよ」
クロ「そしてこっちも普通に応えるし」
福太郎「キョンシーを埋葬するんが仕事なん?」
ラム「本当は私は道長(どうちょう)なんだけど。大まかそれで間違ってないわ」
福太郎「どうちょう?」
ラム「道士っていうのは、体術と法術を修め、キョンシーに関係する仕事に従事するの、本当は義荘(ぎそう)に住んでキョンシーの供養を行って、時には風水や占術の相談も受け付ける一方で、人に害を及ぼすキョンシー退治を専門とする「霊幻道士」としての仕事なの。」
福太郎「ふんふん。」
ラム「っで、今言った「道長」っていうのは旅先なんかで死亡したひとに法術を施してキョンシーに仕立て上げ、それぞれの故郷へ送り届けるためにキョンシー隊を導く先達を専門とするのが「道長」っでも、今どきは旅先で死んだりとか人に害を及ぼすキョンシー退治なんて依頼は無いから……こうして無縁仏さんを埋葬するのをメインに仕事してるわ」
福太郎「なるほど……ほんなら義荘いうは?住んどるってここに?」
ラム「「義荘」っていうのは確かに道士の自宅であり、同時にキョンシーとなった人々を引き取って遺体と位牌を安置し、然るべき供養が行われる霊廟のことだけど、さすがに住んではいないわ。仮のキョンシー安置所、早い話しが霊廟として使わせてもらってるわけ」
福太郎「ラムさんていったい何歳ですのん?ようよう見たらずいぶん若い言うか幼い感じが……」
ラム「……二十三歳よ」
福太郎「ええっ?!俺と同い年?!」
ラム「うっさいわね!」
クロ「片や妖怪の世話。片や死体の運搬屋か」
ラム「葬儀プランナーの大学に通ってる大学生よ!死体運搬屋とかいうな!」
福太郎「しかも葬儀屋さんになるん?」
ラム「だって……住職とかにはなりたくないし」
福太郎「住職とか素晴らしいと思うんやけど」
ラム「イヤよ」
クロ「死体運びはいいのかよ」
ラム「バイト代わりよ」
福太郎「えらいバイトっすなぁ……」
ラム「うっさいわね。それじゃ次はそっちのこと話してもらおうかしら」
福太郎「越後のちりめ…」
クロ「歪業屋だよ」
ラム「あら、歪業の人らだったのね。どおりキョンシーとかに驚かないわけだわ」
福太郎「んっ、歪業のことはしっとるんや」
ラム「まぁね。私は「襖係(ふすまがかり)」もやってるからね」
福太郎「襖係?」
ラム「知らないの?!襖係は歪業を手伝う者のこと妖怪が現代に来る手続きをするのも自分勝手で現代に適さない妖怪を送り返すのも襖係の仕事なのよ」
福太郎「んー、そうなんや。ほんなら俺ら同業者関係なんやね」
クロ「それって鎮伏屋とはどう違うんだ」
ラム「鎮伏屋は完全なハンター。生け捕りとか捕獲して送り返すんじゃなくて完全に消滅、滅殺、成仏させる。要するに完全に人に害をなすレベルになった悪霊や化け物を討伐する事に特化してるのが鎮伏屋よ。霊幻道士のなかにはそっちを専門としてるのもいるけど私は何かそういうの肌に合わないし「道長」も「襖係」もバイトとしてやってるわ」
福太郎「……ところで凄いこというてええ?」
クロ「なんだ?」
ラム「なに?」
福太郎「夜が明けとる」