第肆夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋:庭ー

『他人に迷惑をかけるのは絶対に許されないんだ』

なんだかなぁ、っともやもやした気分を転換するため庭で絵を描いていた、その時……福太郎の頭に茶色い塊りが落ちてきた。

福太郎「うわっ……モフっと、もふっとしたもんがぁ!!って……なんやこれ……」

頭に乗っている温かいモフモフしたものを両手に抱えた。中型犬くらいの毛の塊り……。

メリー「ど、どうしたのーご主人様ー!」

クロ「おい、なんかあったのか!」

福太郎「いや、なんていうか……これ、犬。いや、狸?」





ー福太郎の部屋ー

狸「……んっ」

メリー「あっ、ご主人様ー。起きたよー」

福太郎「んっ、そっか。」

狸「ここは……」

福太郎「喋った。」

クロ「ほら、妖怪だっただろ。お前木の上から落ちてきたんだぞ」

狸「ええっ!?す、すみませんでしたぁ!!」

福太郎「ん、いやいや。怪我は無い?」

狸はポンッと煙に包まれると人間の姿になって改めて謝罪を始めた。

伊左衛門「空を飛んでいたら鳥にぶつかってしまい、大変ご迷惑をおかけしました。伊左衛門(いざえもん)といいます。助かりました。ありがとうございました。」

福太郎「いえいえ」

メリー「狸妖怪なのに後楽さんと全然違うね」

クロ「あのダメジジイと一緒にしたら失礼だろ」

伊左衛門「メールしたので担当の歪業屋さんが迎えに来てくれると思います」

福太郎「んっ、そらよかった。」

クロ「ま、ゆっくりしてけ」


~数時間後~

近衛「……」

福太郎「ボソっ(う……うわあああっ、担当って近衛さんやったん?めちゃめちゃおこっとるみたいやけどみたいやけど……大丈夫?)」

伊左衛門「うぅっ……」

近衛「携帯にも出てくれないので心配していたのですが安心しました。ですが、まだひとりで何もできないのに出歩くなんて感心しません」

伊左衛門「な、何もできなくないですよ!僕、空を飛べるんです!空はいいです。散歩しただけで辛いこと忘れて胸がすーっとします。あ!そうだ、旭さんも今度一緒にどうで……」

近衛「何の話しをしているんですか?僕が言っているのはそんな妖怪の特技じゃなくて人間として何もできないって言っているんです」

伊左衛門「……」

クロ「コイツ……」

福太郎「はいはいはい、そこまで!もうええやないですか。だれにも見つからんかった訳やし」

近衛「そこが浮ついているんですよ御堂さん。じゃあ、もし誰かに見つかっていたら?空を飛ぶ狸?そんな珍妙なもの即刻噂は広がります。妖怪ですもの。捕まって晒しものにされるだけじゃ済まないかもしれない。だから周りに迷惑をかけないように考えて行動するのは当然のことです。」

福太郎「……」

伊左衛門「……」

近衛「帰ります。失礼しました」

伊左衛門「失礼……しました。」

クロ「あーーーー!ムカつく!」

福太郎「迷惑がかかるが口癖なんかなぁ。んー、どっかで聞いたことあるような……?」

クロ「あんなウゼェのが何であーもームカつく!!」

メリー「落ちつきなよクロー」

すっきー『荒れてるっすねぇ……』
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