第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

ピ…………ピポンピンピピピピピンポーン!
ガチャ!

福太郎「悠くん……うちのチャイムで遊ばんといてもらえるかな。」

恋「……」

福太郎「あれ……誰?」

恋「『あたし恋ちゃんようっふーん』って……妙なアテレコするなっ!」

悠「はーい、世界のエンタティナー悠ちゃんだよ~」

福太郎「……なにしとるん」

悠「いや、近くまで来たから顔見に来た。あ、これウチの掃除婦の恋」

福太郎「掃除婦……あー、座敷童子の!」

恋「知っておるのか」

福太郎「悠から聞いとるよ。可愛い掃除婦さんやて。話に聞いてたとおりやね」

恋「なっななっ//」

悠「おいおい、そんな風にいってないだろわりとまじめに働くが良い奴だといったはずだ。」

福太郎「んー、笑うと可愛いいうとったやん」

悠「そうだったけかな」

恋「っ//」

ゲシッ!
悠「痛っ、蹴られたぞ」

恋「ううぅうっさいっ!」

悠「なんなんだ…。あ、そうだこれお土産」

福太郎「あ、わざわざどうも。なに?」

悠「抹茶最中。」

福太郎「渋いチョイスやな……まぁ、あがってや」

悠「いやいやそんな、顔見に来ただけなのにお邪魔します」

恋「なんなんじゃお前は…」

福太郎「ははっ」

すっきー『福太郎さん、お客さんって……やっぱり悠さんとアレ』

恋「なんじゃ、壁の隙間になにかいるの?」

福太郎「やっぱり分かるんやな。すっきー」

すっきー『はーい。私が分かるってこの子……妖怪ですか?それにしては何か神々しいような…』

恋「恋は座敷童子じゃ。神々しいとはふふっ。」

悠「こうごうしぃ?ちょっと可愛いからってそこまで図々しくなったら可愛くないぞ」

福太郎「ほー、見えるんやね。この人(霊)はすっきーでこっちがミツバ。んで、自己紹介が遅れたけど御堂福太郎いいます」

すっきー『隙間女のすっきーです』

ミツバ『ミツバですぅ』

恋「うむ、よろしくの」

悠「お前ミツバのいってること分かるの?」

恋「普通の動物の声が分かるわけあるまい」

悠「福ちゃんは、普通の動物とも話せるぞ」

恋「また嘘を…」

福太郎「いや、ホンマなんよ。まー、他の人が分からんから証拠とかは無いんやけどね」

恋「ほー、特異な力じゃな」

悠「福ちゃんのことはすぐに信じるのな。宇宙人は全否定したくせに」

恋「ひとはそれを信用の差というのじゃ」

悠「……」

みょーーん
恋「いひゃい、ひっはふへふぁぃ!」

悠「ご主人さまへの信用がないとはどういうことだ」

すっきー『可哀想にまた被害者が』

福太郎「アレは被害者いわんと思うで……。しかし、その子……あの人形に似とるな」

悠「あー、福ちゃん」

福太郎「ん?」

悠「(そのことは内密で)」

福太郎「ん、あ、お茶でも入れよか」

悠「いやいや、今日は本当に顔合わせだけだから。もう帰るよ」

福太郎「そう?せやったそこまで送るわ」




ー夢見長屋出入口ー

悠「あれ…」

福太郎「あれ?こんな所に壁やなかったよな?」

悠「男の前には壁が立ちふさがるというが、物理的に出現されても困るなぁ。っか、なんだこれ」

恋「『塗り壁』じゃ。壁に端は無いし、登ることもできぬぞ」

福太郎「へぇー……これがあの有名な塗り壁かぁ。せやけど、これじゃ帰れんなあ」

恋「案ずるな。塗り壁の消し方は足元を払えばよい。ほれ、そこの箒かなにかで……」

悠「はあぁぁ……水面蹴り!」

バシッッン!!
ボフンッ!

悠「ふぅ……消えたな」

福太郎「ホンマやね。見事な博識やね恋ちゃん」

恋「……悠の非常識程ではないがのう」
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