第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

すっきー『福太郎さん、次のページお願いします』

福太郎「んー」

ぺら…

すっきー『じ~』

福太郎「なぁ、やっぱりこれ読みにくない?」

テーブルの上に開いた小説を真剣に見つめるすっきー。

すっきー『だって、仕方ないじゃないですか。私触れないんだし』

そう、彼女は物には触れない。故にテレビのチャンネルも自分では変えられないし、本のページもめくれないのだ。

ミツバ『ごめんなさい。僕がもうすこしちゃんとめくれたら』

昼間ミツバに頼んでめくつてもらおうとしてページに三本の爪痕がついてしまったのだ。言うまでもなく俺の本。

福太郎「いや、ミツバが気にすることやないで」

すっきー『ミツバちゃんはチャンネル押してくれるし助かってるよ。』

福太郎「チャンネルは踏めばええもんな。てゆか、すっきー……何気にミツバのこと使いぱしってない?」

すっきー『そんなこと無いスよ?!ちゃんとお願いして頼んでます!』

福太郎「ホンマかいな……」

ぷるる!ぷるる!

ミツバ『福さん、電話なってまよぅ』

福太郎「あ、はいはい?もしもし?」

真夜中に携帯ではなく自宅にかかってくる電話。無視するのが一番だがこの日はなんとなく出てしまった。

『私メリーさん、今アナタのマンションの前にいるの』

プッ……。
こちらが答える前に電話は切れてしまった。マンションの前まで降りてみたが誰も居ない。ただのいたずらだろうと思ったがそれから毎夜電話がかかってきた。

『私メリーさん、今アナタのマンションの一階に居るの』

『私メリーさん、今アナタのマンションの二階に居るの』

だんだんと近づいてくる……そしてとうとう……

『私メリーさん、今アナタの部屋の前に居るの』

俺はドアを開けて部屋の外を確かめた。もちろん人の気配は無い。鍵をしっかりと閉めて部屋に戻るとタイミングを計ったように家電が鳴り始めた。受話器を耳に当てる。

『もしもし?私、メリーさん、今、あなたの後ろに居るの』

ふり返るとボロボロで片目の無い十数センチの洋風人形がハサミを構えて飛びかかってきた。

悠「ふんっ」

しかし、悠に鷲づかみにされてハサミを取り上げられ、座布団の上に放り落とされた。

メリー「……」

悠「旦那、どうしますかねぇ」

福太郎「今思いっきり殺りにきとったなぁ」

メリー「か……勘違いしないでよねっ!別にアナタの所に来たくて来たんじゃないんだからね。プイッ//」

悠「右頬中心にいじり倒す。」

もちゅもちゅもちゅもちゅ!

福太郎「ちょーっとお仕置きやなこれは」

もちゅもちゅもちゅもちゅ!

メリー「い゛や゛あ゛ぁぁぁぁぁ!」

ツンデ霊のフリをしても誤魔化されませんでした。

悠「軟らかっ!このやろ、軟らかいじゃないかこのやろ!」

福太郎「肌がほんま人みたいやな」

メリー「えーん、ごめんなさいー!ごめんなさいっーー!」

すっきー『またギセイ者が…』
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