第肆夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋:庭ー

福太郎「ふーー、寒い……ん?」

コンビニから帰ったところ庭の片隅に肉っぽい肌色の何かが落ちてるのに気がついた。

肉の塊(?)『……』

福太郎「なんやろこれ……」

好奇心にてつっついてみると、ぷにぷにしている肉の感触だ。

肉の塊(?)『……』

福太郎「んー……」

撫でてみる。人間の肌っぽい体温確認。

肉の塊(?)『……』

福太郎「んんー……」

つねってみる。感触はますますひと肌っぽい。

肉の塊(?)『……』

福太郎「んんんー……ぺろぺろ」

肉の塊(?)『……』

舐めてみる。ちょっとしょっぱい。多分ひと肌だ。

福太郎「何なんや、この奇奇怪怪なる物体は」

クロ「正体不明を舐めてみる福太郎の方がよっぽど奇奇怪怪だろ」

福太郎「んっ、クロ」

クロ「何のゴミかと思ったら。ふぅん『ぬっへっほ』ぽいな」

福太郎「ぬっへっほっ?ぬっぺふほとは違うん?」

クロ「同じだよ、地方でいい方が違うみたいなもんだ。歩く肉の塊みたいなもんで無害な妖怪だ。」

福太郎「んー、へー、そうなんや無害なんゃ」

ぬっへっほっ『……』

ぺちぺちと叩けば肉が揺れる。さすさすとさすれば肉が波打つ。

クロ「なぜんな、なぜんな」

福太郎「だってコレすごいええで?撫で心地最高。ほら、クロも試してみぃ」

クロ「いらん」

福太郎「なぁなぁなぁ、ぬへほちゃん家で飼おうや、クロ」

ギュッと抱きしめるとハムのようになる。

クロ「名前つけるなキモ過ぎるから駄目。どっかに捨てて来い」

むげもない。

ぬっへっほっ『……』

福太郎「ん、動いた。」

ぬっへっほっ『……』

ぬへほちゃんは立ち上がるとぽてぽてと歩きだしてしまう。

福太郎「……いってしまうん?」

ぬっへっほっ『……』

ぬへほちゃんは一瞬立ち止まると手(?)の部分からポトリっと肉の塊をおとして、また歩きだしてしまった。そう置き土産を残していってしまったのだ。



ー福太郎の部屋ー

メリー「ご主人様おやすみー」

クロ「おやすみ」

すっきー『皆さん、おやすみなさいっすー』

福太郎「あぁ、お休み……」

福太郎はみんなが寝静まった後、そっと皿の上にプニプニを置いた。水をあげたら大きくなるだろうか。こっそり育てたらクロにバレんやろか……。皿の上で転がしているうちに眠ってしまった。


翌朝……。

ミツバ『福さん、福さん』

福太郎「んっ、んん……あぁ、ミツバおはよ。……ん?あれ、俺のプニプニは?」

皿の上には何ものっていない。どこかに転がってしまったのだろうか。

ミツバ『あ……ごめんなさい、あの肉団子ならお腹すいてたから食べてしまいました』

福太郎「……なっああああぁぁ?!」

後で聞いたところによると、ぬっへっほの肉は不老長寿の妙薬だったらしい。けど妖怪や動物食べても効かないらしい。別に食べるつもりはなかったが……少々もったいなかったなぁ。
5/100ページ
スキ