第参夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

後楽「兄さん、ひとつおじさんとゲームしないかい?」

福太郎「ゲーム?」

後楽「そうそう。兄さん、麻雀はできる口だよな?」

福太郎「たしなむ程度には」

後楽「それじゃあ、問題だ。高目は出和了りできる役満。安目は満貫でテンパイ。そのとき最大何面待ちになるでしょうか。ただし、リーチやドラなんかの場況は一切問わない」

福太郎「んー……」

クロ「そんなもん国士の13面待ちだろ」

後楽「ぶー」

クロ「なに?」

福太郎「麻雀における最大の多面待ちいうたら確かに国士やけど、安目は満貫でテンパイの部分が満たされとらんよ。安目も高めもない。役は役満のひとつのみや。やから国士13面待ちは除外」

クロ「なるほど」

後楽「さぁ、どうする?五千円だぜ」

クロ「いつの間にそんなルールがついた!」

福太郎「ほんなら、答えられたら?」

後楽「五千円」

メリー「麻雀分かんない」

すっきー『私もっすね』

福太郎「んーー……せゃったら次に待ちが多いんは九蓮宝燈。九面待ちやけど……メンチンやから最低でもハネ満。満貫には絶対にならない……。となると残るは四暗刻単騎待ちかな、役満と満貫の両方を満たす形はふたつ。つまり……五面待ちが考えられる最も多い待ち数。最大五面待ち」

三萬三萬三萬四萬二筒二筒二筒四索四索四索白白白なら二、五、四萬の三枚。四萬で四暗刻、二萬五萬で満貫

三萬三萬三萬四萬五萬五萬五萬四筒四筒四筒白白白なら二、五、三、六、四萬の五枚。四萬で四暗刻、二、五萬で満貫

雪母「邪魔するわよ」

福太郎「あら、雪母さん」

雪母「ちょっとした貰いもんを持ってきてやったわよ。ファッカーども」

クロ「いきなり来て、いきなり口が悪いな」

メリー「なにこれ」

雪母「野菜よ。余りまくってるから腐らせる前にくれてやるわ」

福太郎「そら、おおきに」

雪母「……ちなみにイカレた答えね」

後楽「ほう。姐さんは分かったのか」

雪母「ボソっ」

後楽「かっかっか、正解だ。」

雪母「金は貰えるのかしら」

後楽「いいや、兄さんとの賭けだからな」

雪母「これだから狸と狐は信用ならん」

後楽「かっかっか」

福太郎「まず……まともに考えれば答えは5。四暗刻5面待ちやけど後楽さんが考えとる時点でそんなまともなわけやなし。冷静になって気になるんは問題やな。」

クロ「問題?」

福太郎「役満は出和了りできる、いうたのに満貫はなんでテンパイなんか。もし正解が四暗刻5面張りなら……安目も出和了りできる満貫というはずやろ。」

クロ「私にはもう分からん。そこまで詳しくないしな」

後楽「国士だと思ったところまではよかったんだけどな。素人としては十分だ」

クロ「なんか素人って言われるとカチンと来るな」

福太郎「んー……わかったかも。」

クロ「マジか?」

福太郎「多分やけど……出和了りできる満貫と言わんかったんは答えがわかったら単純な話しなんやけど、それはその満貫が…出和了りできん役やから…」

クロ「つまり?」

福太郎「流し満貫、流局時のみ捨て牌で成立する異端の役や」
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