第参夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

後楽「マジかぁ。英国王室の響きに魅せられて俺は40年近くブルマン男(マン)だったのになぁ」

悠「てめー、ちょっと上手いこといったからって良い気になるなよ!」

恋「ちっちゃいことをいうな」

クロ「アホだな」

福太郎「ってか、根本的なこというたら……イギリスは紅茶やない?それこそ」

クロ「確かに…」

恋「じゃが、それは宣伝戦略的には大成功じゃろ」

後楽「どうりで最近ブルマンを出す喫茶店が減ってる気がするわけだ」

クロ「そこは自覚的だったんだな」

後楽「おじさんはさぁ、なんつーんだ若い衆がスタバとかドトールみたいなカジュアル系の店でチャチャッとコーヒー飲んでるのを横目に……灰皿とスポーツ新聞が置いてある昔ながらのサテン(喫茶店)でゆったりと優雅にブルマンしばくのが好きだったんだ」

メリー「ブルマンシバク?」

福太郎「関西弁でいうところの「茶しばく」の変化球やね」

悠「しかも正確にいえばこのおっさんの場合、スタバ、ドトールにいる若いねぇちゃんを眺めつつエロ記事見てコーヒー飲んでるだからな」

恋「下劣じゃ」

クロ「狸ジジイじゃなく狒々爺じゃねーか」

後楽「ぷはー……しかしブルマンに騙されてるとはなぁ」

悠「ちょっと待て、おれはブルーマウンテンの味に問題があるなんていってないぞ」

後楽「ん?」

悠「THE・高級コーヒーって感じの上品なコクがあってアレは実に美味い」

後楽「なんだ兄ちゃんも飲んでるのか」

悠「新しめの店にはほぼ見当たらなくなったけど昔ながらの「カフェコロラド」チェーンあたりならメニューにあるしな。あとは「珈琲館」チェーンでも産地別コーヒーのひとつとして出してたり」

福太郎「んー、コロラドね。俺もたまにあそこは利用するわ。テーブルの上に茶色の砂糖が置いてあったりするよな」

悠「コロラドは70年代からある老舗チェーンだからな。まったりしたファミリー経営のフランチャイズ店が多くておれもよく使ってる。そういえば京都の方にもブルーマウンテンを備えたコロラドって名前の別の老舗チェーンがあったような気がする」

後楽「コロラドのメニューって普通のブレンドよりも値段が高いブルマンいりのブレンドとさらにぐんと高いブルマン豆100%のヤツの2種類があっただろ」

悠「あるな」

福太郎「俺は大抵値段を気にしてブルーマウンテンブレンドどまりやな」

後楽「……フッ」

恋「……嫌な「フッ」じゃな」

悠「そもそもアイツが高級嗜好品を摂取してるのに殺意が沸く。誰の金で飲んでるんだよ」
メリッ

クロ「おい、テーブルがキシンでるから拳を退けろ。」

後楽「ドトールもスタバもカプチーノもカフェモカもいいが、やっぱり男は黙ってコロラドでブルマンだな」

福太郎「なんやかんやで結構行きつけとるでこん人」

悠「コイツは下手したらおれより若者若者してるからなムカつくことに」

後楽「かっかっか、そういうことで帰りにコロラド行こうぜ兄ちゃん」

悠「おれにたかるな!ついでにいっとくけどなコロラドチェーン店もドトールグループなんだからな。コーヒーの焙煎卸売会社だったドトールが70年代初頭に最初に展開した喫茶店事業がコロラドなんだ」

後楽「ふーん。まぁ、なんでもいいぜ」

福太郎「はじめっからなんでもええんですね……」
92/100ページ
スキ