第参夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「ふー、ふー……ずずっ」

悠「ふぃー、コーヒーはインスタントに限るな」

福太郎「そうなん?」

悠「ガリレオの湯川先生はそういってた」

クロ「お前の意思はどこだ」

悠「コーヒーも嫌いじゃないかな。紅茶よりは好き」

福太郎「あれ、紅茶嫌い?」

悠「嫌いって程ではないけど進んでは飲まないな。お茶のが好きだ」

恋「恋も茶のうほうが好きじゃな」

サララ…

悠「お前、砂糖入れ過ぎじゃね?」

恋「苦いの好かぬ……」

福太郎「あら、コーヒー駄目?」

恋「いや、まぁ……平気じゃ」

悠「まぁ、禅レベルにならなきゃ平気だろ」

福太郎「禅君?」

悠「禅は珈琲好きなんだけど、じゃりじゃりいうほど砂糖いれるんだ。最後はスプーンですくって食ってる」

クロ「胸やけしてくる」

悠「糖ジャンキーだからな。だから頭が良いんだよきっと」

恋「そんなもんを飲んだら脳が蕩けるわ」

後楽「おじさんはブラックのブルマンが好きだな」

メリー「ぶるまん?」

悠「やめとけよ、おっさん。ブルマンなんて今どきのヤツには通じないぞ」

後楽「マジか……あっ、福君、火貸してくれ。後灰皿」

福太郎「んっ、どうぞ。あと福君はやめましょ」

悠「っか、吸うなよ。福ちゃんですらちゃんと吸うときはベランダで吸うのに」

後楽「ブルマンってのは「ブルーマウンテン」コーヒーの事だよ」

悠「人の話し聞けや」

福太郎「まぁまぁ、ここらでひとつ悠の蘊蓄を聞きたいな」

悠「お、そうか……それじゃあ、「ブルーマウンテン」ってのはジャマイカはブルーマウンテン山脈の標高800メートルから1200メートルの地域で栽培された高級コーヒー豆の呼び名だ。ちなみに「エメラルドマウンテン」の場合はあくまでコロンビア産の高級豆のブランド名でそういう山や山脈は存在しない」

福太郎「ほほう」

恋「こやつ、悠の扱いが分かっておるな」

クロ「本当にな…」

後楽「それにしても、ブルマンは若者に通じなくなってきてんのかぁ」

福太郎「悠が分かる時点で、通じん事もないんちゃうの?」

恋「悠は若者ではない」

悠「十八歳なめんなっ!まぁ、それは置いといて最近はブルーマウンテン信仰も薄れてきてるから、あんまりブルマンて言わないんだよ」

後楽「信仰ってのは?」

悠「そもそも高級豆としてのブルーマウンテンは日本でのみ神話化していったブランドで欧米ではあまり知られてないんだ。」

福太郎「そういえば海外系のチェーン店では全然見んなぁ……」

後楽「でも、それぐらい高級ってことじゃないのか?「英国王室御用達」で有名だろ。」

悠「半世紀以上も昔最初に輸入された時に日本の業者が当時のジャマイカは英領だし、「王室でも飲んでるだろう」って根拠のない推測をして「英国王室御用達コーヒー」なるキャッチをつけて売りだしたら大ヒットして、それからずっと生産量のほとんどが日本向けに輸出されてる豆なんだよ」

後楽「マジか…」

福太郎「そんなことよう知っとるな」

悠「まぁね」
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