第参夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

ぴんぽーん!

メリー「はーい、あいてまーす。」

由乃「こんにちは」

メリー「いらっしゃい」

由乃「メリーちゃん。福太郎さんは?」

メリー「ご主人さまなら出掛けてるよ。」

由乃「そうなの。」

メリー「なにかご用事?」

由乃「ううーん。用事といいますか……進展があったかどうかの話をしに来たんだけど」

メリー「進展?」

クロ「あの、探してる子供のことか?」

由乃「はい、なにかわかりましたか?」

クロ「全然。」

由乃「そうですか……」

クロ「でも、腐っても神族の端くれだろ?心配する必要なんてあるのか?」

由乃「でも、子供さんらしいし、やっぱり少しは……」

福太郎「たーだいま」

由乃「あっ、おかえりなさい。お邪魔してます」

福太郎「んっ、ああ。ども。どないしてん?」

由乃「いえ、ちょっと愛ちゃんのことで進展があったかどうかの相談に」

福太郎「んー……」

由乃「なしですね。」

福太郎「せやねぇ。そっちは?」

由乃「街に出たときは注意しているんですけどなかなか……」

福太郎「広い街で子供ひとり見つけるんわなぁ」

由乃「もう少し有力な情報があればいいんですけど」

福太郎「名前と写真だけいうんがなぁ。」

クロ「だから、私の出番だろ」

福太郎「この前、思いっきり失敗してましたやん」

クロ「あれは後楽が悪い」

福太郎「後楽さんの問題やろか?」

クロ「あいつのせいだよ」

福太郎「まぁ、そういうならそれでもええんやけど」

クロ「仕方なしみたいにいうなよ!」

由乃「あはは」

福太郎「まぁ、せっかくやからお茶でもいれますわ」

由乃「あ、すいません」

福太郎「いえ、いえ」

クロ「茶なかったんじゃねーの?」

福太郎「あら、ホンマや。コーヒーでええ?」

由乃「あ、はい。大丈夫です」

福太郎「お砂糖は?」

由乃「お願いします。それより、スゴいですね。このコスモス」

メリー「ゆうかりんランド産なの」

由乃「ゆうかりん?」

福太郎「気にせんといてください」

クロ「少し前に花の妖怪が来ててな咲かしていったんだ」

由乃「花の妖怪……素敵ですね。」

クロ「あれは……素敵ってのとは違う。」

福太郎「逞しい凛々しいかな」

由乃「へぇ、そうなんですか。」

メリー「綺麗なひとだったよ。」

福太郎「メリーちゃんは幽香のこと気に入っとるなぁ」

クロ「私は勘弁願いたい」

福太郎「クロは怯えすぎやろ。」

クロ「あの女は怖い。お前は知らないだろうけど、畑耕してるとき本気で三回くらい殺されかけたんだぞ」

メリー「傘で叩かれかけただけじゃない」

クロ「あいつの一撃は即死レベルの威力があるんだよ!」

福太郎「まぁ、当てられてないしええやん」

クロ「軽くいいやがって……」
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