第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「ただいま。」

ミツバ『おかえりなさいですぅ。どーでしたぁ?』

福太郎「あー、うん。問題なしや。」

ミツバ『よかったです。なに描いてきたんです?』

福太郎「今回はビルの絵や。」

ミツバ『ビルですかぁ。いつか飛び越えてみたいですよねぇ』

彼の夢はいったいどれだけ大きいの気になります。

福太郎「飛び越えれるようになったらええなぁ」

ミツバ『はい~。』

福太郎「それよか、すっきーは?」

ミツバ『そういえば今日は朝から見てませんねぇ』

福太郎「そうなんや。ふーん……?」

なんとなく隙間に指を入れて引っ張ってみました。すると、ずる~りと長ーい髪の毛でも抜くように、すっきーを引っ張りだせました。

すっきー『あぁ……久々に引っ張りだされる感覚……。』

福太郎「ども」

すっきー『どーも、なんかようスか?』

福太郎「いや、朝から引き込んどるいうから体調でも悪いんかなーって」

すっきー『ご心配してくれるのは嬉しいっすけど……正直昼間は眠いんスよね。夜行性なんで、それにミツバちゃんには触れないし、福さん居ないと話しも出来ないし。けっこー暇だったりするんスよね~』

福太郎「なるほどなぁ。せめてリモコンでも触れたらテレビくらい見とれるのになぁ」

すっきー『……福さんて人がいですよね』

福太郎「人がいいって……いい人だろ。」

すっきー『あはは。今日は悠さんは来なかったんですね』

福太郎「んー、なんや今日は飲みに行くとかいうてたんよ。」

すっきー『福さんは外で飲んだりしないんですか?』

福太郎「いや、するで」

すっきー『それにしてはいっつも定時に帰ってきてるような…?』

福太郎「んー、まぁ、最近は家帰ったら話す人も増えたしな。」

すっきー『……え、それってもしかしてあたしスか?』

福太郎「せやけど?」

すっきー『あ、あはは//ちょっと、ドキッとしちゃった。心臓動いてないけど』

福太郎「なんや、怖いこというなぁ……。」

ガタゴト……

すっきー『あ、それ今日描いてきた絵スか。出ました幽霊?』

福太郎「あー……多分、成仏したと思うで……悠君の蹴り喰らって星になってしもたから」

すっきー『あの人の犠牲者がまたひとり……』

福太郎「見えてないのによう当てれると思うよホンマ……。」

すっきー『福さんも出来るんじゃないですか?さっきも普通にあたしのこと引っ張りだしたし……というか、よくあの隙間にいるって分かりましたね』

福太郎「そういえばそうやな」

すっきー『えぇ……適当っスか』

福太郎「適当っていうか……そこにおるなぁってのは何かわかった。」

すっきー『ついにあたしが福さんの心の隙間を埋めちゃいましたか』

福太郎「はいはい。」

すっきー『福さんて……ときどきめちゃくちゃ冷めてますよね』

福太郎「冷静なだけや。いや、俺ももうちょい若かったらふざけて変なノリしとったかも……悪い意味でやけど」

すっきー『なんか年寄くさ…』

福太郎「……」

ぎゅぅぅぅ
すっきー『いひゃい、いひゃいっひゅ~!!』
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