第参夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋西口付近(深夜)ー

福太郎「んっ?」

悠「あー?」

福太郎「ん、悠……なにしとるんこんな時間に」

悠「いや、どちらかというとおれのセリフなんだけど」

福太郎「俺は夜の散歩」

悠「奇遇なことにおれもだ」

福太郎「んっ、悠の場合は散歩やなーてパトロールとちゃうの?」

悠「散歩の気持ちからパトロールな気持ちに切り替わった時がパトロールであって今は散歩だ」

福太郎「ん、なるほど」

悠「福ちゃんこそ散歩ってこんな時間にか?」

福太郎「ん、深夜の散歩は趣味やから」

悠「そいつはいい趣味だ。アレだろ何回職質されるかを試すんだろ」

福太郎「そんなことしとるん?」

悠「ときどきしてる。」

福太郎「職質以上のことにならんようにな」

悠「今のところは大丈夫だ。それで福ちゃんの散歩ネタは?」

福太郎「んっ、ネタ言うか……しんしんとした夜の空気の中ただただ歩く、かな。日中にはない明り、闇ん中でないと見えん色、浮かび上がる建物が異界を感じさせてなんとも魅力的やろ」

悠「福ちゃんは詩人だな」

福太郎「ただ、あんまりにも魅入られ過ぎて意識が現実ではない異界に持ってかれそうになることもあるんやけどね」

悠「そいつは……危ない。」

福太郎「せやろ」

悠「福ちゃんの場合はリアルに異界にもイケそうだしな」

福太郎「行った瞬間に逝くんやろうけどね。アイアム弱小」

悠「逃げ足は鍛えといて損しないぞ」

福太郎「逃げ足云々以前に体力がないねんけどね」

悠「あっ、コンビニ寄るけど行く?」

福太郎「行く」




ーコンビニー

悠「小腹が空いたから人工的な味のもの食べたいな」

福太郎「駄菓子とか」

悠「んまい棒とかいいな」

福太郎「そういうんて余計お腹すかん?」

悠「二十本くらい食ったらさすがに満腹感でるぞ」

福太郎「代わりに胸やけも思想やけどね」

悠「やっぱりカップ麺かな」

福太郎「その流れでカップ麺」

悠「深夜の歩きラーメン楽しい」

福太郎「なかなか濃い行動やね」

悠「ごく稀に通行人とすれ違ったらめっちゃ怪しまれるけどな」

福太郎「妖怪の類と思うわな」

悠「誰が妖怪ラーメン啜りだ」

福太郎「やや自覚あったんやね」

悠「おれも初めて見た時は妖怪の類と思ったからな」

福太郎「んっ、第一人者ではないん?」

悠「ううん、おれも見かけて真似た側」

福太郎「真似るンもどーなんやろか」

悠「とかいいつつ、福ちゃんもカップ麺手に取ってるよね」

福太郎「んっ、せやね」

悠「大きいのは持ちにくいから普通のタイプがいいぞ」

福太郎「やりなれとるなぁ」

悠「気のせいだ。どでかカップでやって、段差に躓いて汁が跳ねて被ったことなんてない」

福太郎「具体例をありがと」

悠「すげぇラーメン臭させて帰宅したよ」

福太郎「せやろね」
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