第参夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋:西口公園ー

福太郎「んんー」

悠「んー」

ゆえ「んー……」

福太郎「んんっ?!」

悠「きゃっ」

福太郎「あー、びっくした。悠、黙ってひとの背後立つんやめよや」

悠「すいやー、見知った耳たぶが見えたからつい」

福太郎「耳朶て……ん?」

ゆえ「え……」

福太郎「え?」

ゆえ「え、かいてる……?」

福太郎「せやで」

ゆえ「じょうず……」

福太郎「んっ、ありがと。」

悠「ゆえ、飲み物三本買ってきてくれ」

ゆえ「はあく……。」

福太郎「彼女?」

悠「ワンストライク」

福太郎「雰囲気が似とったから……親戚」

悠「ツーストライク」

福太郎「……兄妹?」

悠「スリーストライク、アウト」

福太郎「答えは?」

悠「娘」

福太郎「へぇ、りっぱな娘さんやね」

悠「……反応薄っ」

福太郎「いやいや、十二分に驚いとるよ」

ゆえ「かってきたー……」

悠「おお、何買ってきた」

ゆえ「おしることおしることおしるこ……」

福太郎「まさかの三球おしるこ」

悠「まだ暑いのに汁粉販売してたんだな」

ゆえ「おしるこすき……」

悠「おれの作るのよりは味が落ちるぞ」

ゆえ「なんと……」

悠「まぁ、ほら福ちゃんもどうぞ」

福太郎「どうも。暑いなかでのお汁粉もなかなか……乙やね」

悠「精いっぱいのフォローグラッチェ」

ゆえ「ごちそうさま……」

福太郎「早いな」

悠「小豆噛まずに飲んだだろ」

ゆえ「かれーものみもの…」

悠「うん、そうだね」

福太郎「いや、ちゃうやろ。あとちゃんと会話のキャッチボールしいや」

悠「何球続ける?」

ゆえ「せんきゅーだ……!」

福太郎「ああ、親子と納得したわ」

悠「どういう意味だ」

福太郎「ええ意味やで」

悠「ならよし!」

ゆえ「ねっ、えかくのみせて……」

福太郎「んー、ええけどつまらんよ?」

悠「なんにでも興味を持つお年頃なんだ見せてやってくれ」

福太郎「んっ。ほな……やってみよか。」

ゆえ「おとーさんもかける……?」

悠「トレースするだけなら出来るかもだがおれは芸術性はないからな」

福太郎「感性は独特やと思うけどね」

悠「ソレどういう意味だ?」

福太郎「もちろん褒めとるよ」

悠「ならよっし!」

ゆえ「ちょろい……」

悠「なんか言ったか?」

ゆえ「ちょーうまいって……」
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