第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

隙間女『しくしく……しくしく……』

悠「どんな感じ?」

福太郎「あー……めっちゃ鳴き声聞こえとる」

悠「マジか……。」

福太郎「悠は……ホンマに聞こえとらんの?あと、見えとらんの?」

悠「全然。だから、こうやってタンスと壁の隙間に手突っ込んでも何の手応えも無くてな」

グィッ!ガシッ!ずりずり…

隙間女『えっ、ちょ……きゃーきゃー!』

福太郎「ちょっ、ひっぱり出し取るで!」

悠「え、そなの?」

福太郎「わからんいきに足首掴んどるって……あのー、そちらさんは平気?」

隙間女『ぜーぜー……なんでフツーに触れるんスか?』

悠「なんていってる?」

福太郎「なんで普通に触れるんて聞いとるで」

悠「触ってる感覚は無いぞ。なんとなくだ。」

福太郎「悠、そっちには居らんこっちゃ」


隙間女『む、むちゃくちゃっすね……。アナタは……普通に見えて、触れるんスか?』

福太郎「そういえば……そうやな。」

隙間女『それで……何か用なんスか?』

福太郎「悠、なんか用なんかて」

悠「じゃあ、なんか面白いことしろ」

福太郎「見えてへんやん自分……」

隙間女「面白いことって……あたしにはこれくらいしか」

隙間女は隙間に戻ってこっちを見つめてる。

悠「それは見あきた」

福太郎「見えとるん?」

悠「狐窓を作ったら、隙間から覗く目だけは見えた」

福太郎「狐窓?その変な手のヤツ?」

悠「こう、片手、片手に狐を作ってそれを右手の指が前、左手がの指が自分側に向くようにして耳の部分(小指と人差し指)を絡めて、中指と薬指を開く、っで、この窓を覗くと狐の嫁入りが見れたり、人などに化けている妖怪の正体を見破る事ができるらしい……」

福太郎「こうか……あ、指吊りそうや」

隙間女『ん、んん……あたしできねーっす』

福太郎「いや、自分は幽霊やろ」

悠「あ、じゃあ、これの中に入ってみてくれないか?」

【急須】

隙間女『いやいや、それは無理』

悠「なんていってる?」

福太郎「それはでけん(できない)て」

悠「じゃあ、どんなことができる?」

隙間女『そっすねー、タンスの隙間とかは定番すよねーでもあんまりせますぎると見つけてもらえないし……前の人なんか一年かかったスよ。余裕を持って二センチは幅欲しいとこっす。理想ですけど。じゅうたんのちょっと浮いた隙間や本棚の本の隙間とかも意外性ありますし、ベッドのしたとか広いけどギリギリありっすかね……あとは、アナタの心の隙間……とか?えへ//』

福太郎「とかいうてはるよ」

悠「てゐ。」

ぺしっ!
隙間女『あん!』

福太郎「うまいこと当てるなぁ」

悠「スッキーはその業界ながいのか?」

スッキー『すっきー……え、えーと、ただ霊に見られてたーなんて話そこらにいっぱいあるっスよねー。』

福太郎「あるなぁ」

スッキー『心霊写真とかもほぼその類ですし…名も無き霊たちってゆーか。その中で特別、固有名詞ついてるってのはちょっと自慢スよねメジャー入りの第一歩って感じで』

福太郎「口裂け女とか花子さんとか?」

スッキー『そうそう。っで、あたしは流石にそこまでではないですけど。まあそう、他の雑魚連中よりはインパクトあるらしくて』

福太郎「同じ見てるだけやのに?」

スッキー『まぁそうなんですけど。でもやっぱり意外なとこから見てるてのが大事で誰もやらないことを狙ってやることで取り殺すとかポルターガイストとかそんなパワーがなくてもこの業界やってけるもんなんすよ!』

福太郎「オチはすき間家業?」

スッキー『あ~ん先いっちゃダメー!!』

悠「おいおい、二人で盛り上がるなよ」

福太郎「あ、ごめん。せやけど、よく喋る怪異やな。」

スッキー『いや~久々にたっぷり話せて満足っす~~♪』

福太郎「久々に話せて満足なんやって」

悠「へぇ、成仏しそうか」

スッキー『いや、そこまでは』

悠「じゃ、面白かったし。おれは帰るわ。福ちゃん、スッキーまたな」

福太郎「あ、うん。おつかれさん」

スッキー『あ、お、お疲れさまっす』

福太郎「んー、俺も寝よかな」

スッキー『あ、はい。……もうこんな時間』

福太郎『ほな、スッキーおやすみ』

スッキー『…………はい、おやすみなさい…。』

福太郎「……スッキーは?」

スッキー『あー、気にしないでください。あたしらむしろこの時間からが仕事っすから』

福太郎「仕事?」

ススッ……
スッキー『とりあえず今夜はシンプルにこの辺りからアナタを見つめつづけていようかな……と…じ~~』

福太郎「すき間に帰り」
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