第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

クロ「おら、飯できたぞ」

福太郎「っていうても、ほとんど俺が作ったんやけどね」

クロ「うっせーよ。あたしだって手伝ってんだろ!」

鬼『……』

すっきー『こんばんわっす』

鬼『わっ、こ、コンバンワ』

すっきー『私はここ(隙間)に住んでるものですっきーです。』

鬼『えと……鬼っス』

福太郎「名前とかはどうなるん?」

鬼『ええと、一応鬼道丸(きどうまる)という名前はあるんスけど、こっちでの新しい名前を考えるつもりっス』

福太郎「なるほどなぁ。まぁ、ご飯にしょーか。クロ、鬼君に例のもんを」

鬼『例の……物?』

クロ「はいはい、ほら、これだ。」

鬼の前に置かれたのは卵、極々ありふれた鶏の生卵だ。

鬼『これは?』

福太郎「割って食べて。ただし、一度きちんと「割って」からな。潰したらアカンよ。こうやって……」

福太郎は卵をテーブルの角にコンコンとぶつけて、ご飯の上でふたつに割った。ポトンと中身が落ちる。

鬼『……』

福太郎「はい、鬼君。レッツ、チャレンジ!」

鬼『う、ウス!』

ぶるぶると震える手で同じようにテーブルの角に卵をぶつけた。しかし、力加減が悪かったらしくぐしゃりと手の中で潰れてしまう。

福太郎「やっぱり難しいかー。まぁ、このように毎食卵を食べてもらいます。卵をうまあに割れるようなったら力加減ができとるといってもええやろ。食べもんを扱うんは行儀が悪いけど慎重になるしね」

鬼『無駄にはしないっス。』

手の中でぐしゃぐしゃになっている卵を鬼はひと息に啜り取った、もちろん殻ごと。

福太郎「汚いて!?」

鬼『野生の鬼なんてこんなんスよ。殻もくいます』

福太郎「外では絶対せんといてな!」

鬼『今回だけっス』

クロ「卵を割るねぇ……。」

福太郎「ん?なんかアカンかった?」

クロ「いや、なかなか良い案じゃねーか。」

福太郎「クロは力加減とかどうなん?」

クロ「ハッ、私がその気になりゃお前なんかひき肉だぜ」

福太郎「ん、行儀悪いけん箸を振りまわさんの」

クロ「ッ……このやろっ」

福太郎「あ、鬼君。一応魚も身をちゃんとほじって……」

鬼『あぐ?』

メリー「わー、すごーい骨ごと食べてる」

福太郎「んー…………ま、魚の骨はカルシウムやね。セフセフ」

クロ「……良いのかそれで」

福太郎「悠も魚は頭から尻尾まで食べるいうてたし……ししゃもとか」

クロ「それは頭から尾まで食える魚だろ。太刀魚だぞコレ」

福太郎「んー……アンコウとかやないしセーフ」

鬼『こっちの飯って……美味いっすね!!』

福太郎「ホンマ?そら良かった。」

クロ「お前料理とかも覚えんのか?」

鬼『ウス。ひとりで暮らせるように一通りのことは覚えるつもりっス』

福太郎「その辺りはクロに任せるな」

クロ「はぁ?!」

福太郎「あぁ、ちなみに拒否権はないでこれお仕事やし」

クロ「うぐぐ……。」
65/100ページ
スキ