第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー商店街:ジェリーショップー

福太郎「ここちょっと見ていこか」

鬼『ウス』

店員「いらっしゃいませ……あっ、もしかして福太郎さんですか?」

福太郎「ん、はいそうです」

店員「じゃあ、こちらの方は……」

鬼『……』

福太郎「ええ、ちょっと外を散策中なんです」

店員「ああ、ではちょうどいい。私の店を是非見ていってください」

福太郎「綺麗なお店っやね」

店員「先週オープンしたばかりで諦めなくて良かったです。」

鬼『ほー……』

店員「こんにちは」

鬼『!ウッス…』

店員「私も妖怪ですのでそんなに驚かないでください」

鬼『あ……そうなんスか』

店員「私も福太郎さんではないけど歪業の方にお世話になったんですよ」

福太郎「ん、ブローチ綺麗やな」

店員「よかったらいかがですか?そちらなら男性の方でも似合いますよ」

福太郎「ほな……ひとつもらおか」

店員「ありがとうございます」





ー遊歩道ー

福太郎「これ手作りなんやって」

鬼『スゴいっスそういうの作って生活しているのあんなに人間に溶け込めるもんなんスかね』

福太郎「えーと、詳しいは知らんけど彼はどうしても人間のアクセサリーを作って生活したいって言うてたらしいよ。自分で作ったものが誰かに喜ばれたらそれ以上、幸せなことはないって……そーいえば、鬼君がこっちにきた、来た理由まだ聞いてなかったね」

鬼『自分は……』

そのとき、鬼の足もとにゴムの小さなボールが転がってきた。

「おにいちゃーーん!!」

福太郎「ん?」

少年「おにーちゃんそれ僕の!なげてなげて!!」

鬼『……』

小さなゴムボールを拾って投げ返そうとした瞬間、ぱぁん……っと握り潰れてしまった。

福太郎「あちゃ……」

鬼『……っす…すま!!』

少年「僕のボール……うわああああんっ!!」

福太郎「あっ、待って……って、走るん速っ……もう見えへん。君は君で平気……?」

鬼『…………』

鬼は自分の手に残ったボールの残骸をジッと見つめている。その表情はどう見ても暗い。

福太郎「あの、ホンマにだいじょうぶ?」

鬼『自分…自分、馬鹿力なんです』

福太郎「一回、家かえろか」





ー百鬼襖の部屋ー

福太郎「ん、まぁお茶どうぞ」

鬼『ウス…』

福太郎「あの男の子はたぶん商店街の子やろうから近いうちに新しいボール持って謝りいこ。優しそうな子やったし許してくれるよ。」

鬼『……』

福太郎「力の加減が出来んのは最初やし仕方ないやろ」

鬼『……自分、人間の世界なんて居ないで向こう帰った方がいいんスかね…』

福太郎「んー…………さっき聞きそびれた、君がこっち来た理由聞いてええかな?」
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