第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「……よし、ひと通りのモンに目ぇは通せた」

クロ「マメだなぁ」

福太郎「ま、ほとんど分かってはなんやけどな。読んだだけで」

クロ「なんだそりゃ」

福太郎「目は通したって自己報告」

クロ「……」

福太郎「さて、そろそろやから行ってくるわ」

クロ「あぁ、まぁ死ぬな」

福太郎「あんまり洒落にならんこと言わんといて」

メリー「私もついてく~」

福太郎「まぁ、隣に行くだけなんやけどね」





ー百鬼襖の部屋ー

りーん、りんりん、りーん♪

メリー「あ、何か鳴ってる」

福太郎「えーと、このマニュアル本によると百鬼襖の鈴が鳴るときは向こうからの呼びかけである」

メリー「つまり?」

福太郎「呼び鈴ってことやろ。はいはーい、今開けまーす」

カララ……ぬっ!
襖の中から出てきたのは三、四メートルの身の丈に二本の長い角を頭部に生やし、目の部分しか穴が空いていない無機質な面を被った巨人だった。素顔は見えないが眼光は鋭い。

鬼(?)『グルルルル!グルルルルルルゥゥッ!』

メリー「で、でっかい。」

鬼(?)『グルォ……』
ぺしっ!
叫ぼうとした鬼にハリセンて軽くたたいて停止する。

福太郎「はい、唸らんようなね」

鬼(?)『ウッス…』

メリー「ご主人様すごい度胸」

福太郎「はじめまして俺は御堂福太郎です。窓開けとるから響くんよ少しだけ静かぁにしてな」

鬼(?)『ス…スンマセン…』

福太郎「ええよ。そんで、これから君がひとりで生活できるように色々と手助けするんで、よろしゅう。鬼君」

鬼『ウッス』

福太郎「一応、ここでしばらく寝泊まりな。俺は隣に住んどるし、なんでもすぐに話しは聞くような感じで……色々覚えてって」

鬼『ウッス』

メリー「私はメリーよ、よろしくね」

鬼『?』

福太郎「下、足元」

メリー「こっちよ、踏み潰さないでね」

鬼『!!』

福太郎「えーと、彼女は人形のメリーちゃん。妖怪の部類で俺の所有物。一応人間界での生活やったらメリーちゃんのが長いし聞きたいことあったら遠慮なくこの子にも質問してええよ」

メリー「えっへん」

福太郎「まぁ、脳は人形サイズやけどね」

メリー「むー!」

福太郎「えーと、そんで教えることはたくさんあるんやけど、実際に外を歩きながらのが分かりやすいわな。副都心やしけっこうな都会やで、この後散歩しょーか」

鬼『ウス…』

福太郎「ん、それとこれだけ……君もわかっとると思うんやけど大事なこと。人間にケガをさせんことな。人間と妖怪やと力の差があり過ぎることがあるけんね」

鬼『ウ……ウス……』

福太郎「ん?」

メリー「鬼さん、どうかした?」

鬼「ぶんぶん!」
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