第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「……って、ことが昨日あってなぁ」

悠「軽っ。福ちゃん。軽すぎるだろ。もっと抵抗するなり怒っていい所業だべ」

福太郎「んー……まぁ、イエスって返事してしもたしなぁ」

悠「えぇ…」

福太郎「それに抵抗いうてもヘタに何かしてダイオウグソクムシとかに変えられたら怖いゃん」

悠「……確かにおれもナメクジにされたらショック死するかもしれない。」

後楽「兄ちゃん、ナメクジくらいで怯えんなよ」

悠「無理、形状が無理、ぬめりが無理、カラーが無理、生態的に無理」

メリー「カタツムリは?」

悠「可愛い」

メリー「おかしいでしょ!!」

福太郎「気持ちは分からんでもないけどね」

悠「おれの嫌いなものの話しは良いんだよ」

福太郎「なんの話しやっけ」

悠「福ちゃんが妙なことを押し付けられた話しだろ」

後楽「歪の仕事ねぇ」

悠「いびつ?」

後楽「おじさん今、ひずみっていったよな。」

福太郎「歪ってなんですの?」

後楽「古くでいえば陰陽道が発端とも言われてるが……よーするに異形のもんを現世で使役するってこった」

悠「召喚獣とか悪魔召喚……って、ことか?」

後楽「昔ならな。けど、今は奴隷的や呪術、従僕な関係はあんまりねぇ。ほら、おじさんも全く害は無いだろ」

悠「実害あり過ぎておれの財布が悲鳴上げてるぞじじい」

福太郎「ほな、なにするん?」

後楽「兄さんも聞いてる通りの仲介だよ。ま、どっちかっーとサポートだがな」

悠「詳しいのかじじい」

後楽「そりゃ、おじさんは人間界ちょー長く渡ってきてるしな」

福太郎「ほな、説明してもらえます?」

後楽「それじゃ、まずはお神酒を」

悠「溶かしたアルミを流し込んでやろうか」

後楽「それはなんの魔女狩りだ」

福太郎「まぁ、ええんちゃう。普通に缶ビールしかないけど」

悠「福ちゃん甘いよ。練乳みたいだ。」

福太郎「股間押えていわんの」

後楽「歪の仕事ってのはな、人間界に移住し生活することを望む妖怪なんかが早く世の中になじんで自立できるように色々なことを手伝う職だ。」

悠「職って……職業なのか?」

後楽「おうよ。ちゃんと福利厚生もあるぜ。んでまぁ、人間界への興味や夢をかなえるため引っ越してくる妖怪に人間の世界で生きるための知識を身に着ける手伝いをするってのが全体像だ。」

福太郎「へー……」

悠「それってなんか資格とかは?」

後楽「いらねぇが……まぁ、ビビりには無理だろうな。中には当然アウトローなのも居るし」

福太郎「ほな、後楽さんも歪業のひとらに世話してもろて今に至るん?」

後楽「んにゃ、おじさんはしっかりと自立してる妖怪だぜ」

悠「自立してんならハロワ行け、働けごく潰し」

後楽「ヤダ」

悠「うぉぉぉ!ぶちころがしてぇ!」

福太郎「けど、分からんのやけど……妖怪は人間から離れていったんやろ?なんで今さら人間界に来たいん?」

後楽「そりゃ、人それぞれ、妖怪それぞれさ」

福太郎「ふーん……。」

後楽「ま、それもこっちに来る新人妖怪さんに聞いてみりゃいいさ。分からないことを知ってくのも人生だぜ。」
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