第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋近くー

「ったく、完全に見られてるじゃないか……適当に言いくるめて追い返す僕の身になってもらいたいもんだ。」

福太郎「あの、完全に聞こえとるんやけど」

「盗み見したうえ、盗み聞きとは太ェ野郎だな!」

福太郎「めっちゃ普通に大きい声でいってましたやん。」

「うるさいっ!」

福太郎「えぇ、んな理不尽な」

「世界は理不尽というクリームで塗り固められてるんだ。諦めろ」

福太郎「はぁ、諦めるんはなれとるし、ええけど……。ひとつ聞いてええかな?」

「なんだ?」

福太郎「さっきのって宇宙人やろ。キミも?」

「お前の眼は藤壺か」

福太郎「節穴かいわれるんならしっとるけど藤壺いうんは初めて聞いたわ」

「僕みたいな絶世の美少年が宇宙人のわけ無いだろ。まぁ、この世のものとは思えない美貌という意味でなら……確かにただの人とは違うと勘違いしても仕方ないけどな。ハッハッハッハハハハ!!」

メリー「ポソポソ(この世のものではない不気味さっていうのなら分かるけど、鏡見たこと無いのかしら。)」

「ん?なんか女の声がしないか?」

福太郎「んんっ、気のせいやろ」

「そういえばさっきのキリギリスの鳴き声もよくよく思い出せば女の声だったじゃないか」

福太郎「そこまで解析できるのになんで猫とキリギリスを勘違っとるんかがわからんなぁ」

「っで、貴様は誰だ?」

福太郎「そっちこそなんなん?」

「誰だというお前が誰だ?」

福太郎「あれ、なんか無限ループ臭い。」

「誰だというお前が誰だというお前が誰だ!」

福太郎「御堂福太郎です」

「なんだ、生意気に幸福そうな名前しやがって」

福太郎「そんな因縁のつけられ方はじめてや」

「初めてづくしで良かったな。僕にむせび泣いて感謝しろ。」

福太郎「……っで、そっちは?豚まん妖怪とか?」

ミハイル「ハッハッハハハ、お前さては冗談が下手糞だな。僕はミハイル・竜胆・八世だ。こんな美少年を豚まんだなんて眼科いった方が良いぞ」

福太郎「……ミハイル、竜胆?ハーフ?」

ミハイル「僕は心が広いから親しみを込めて発明探偵ミハちゃんか絶世の美少年ミハイル君か殿下でいいぞ」

福太郎「どうしよう、殿下以外のは長いし殿下は殿下でよびたーないな」

ミハイル「一般庶民には僕が恐れ多いのは分かるぞ。ハッハッハハハ」

福太郎「よう笑う子やな……しかも、大ボリュームで」

ミハイル「さて、本題に入るぞ。今さっき見たことは他言無用だ。まぁ、いったところで信じられるわけはないが……ヘタに騒ぐなら」

福太郎「騒ぐなら?」

ミハイル「謎の失踪を遂げることになるぞ」

福太郎「それってキャトル・ミューティレーション……」

ミハイル「いや、僕が拉致して永遠に地下施設で働いてもらう」

福太郎「ただの拉致ですゃん」

ミハイル「だから、拉致だといっただろう。話しを聞いてないのか」

メリー「ぽそぽそ(ご主人様刺す?)」

福太郎「あかんて。」

ミハイル「なんだ?」

福太郎「ぁ、いやー他言は多分せんと思うけど……」

ミハイル「多分だと~」

福太郎「まぁ、今夜は遅いしこの辺にしてもろーてええかな。ええ感じに眠気がきとるし」

ミハイル「お前、なかなか太ェ野郎だな」
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