第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

悠「ここらってなんか最近、カラス多くね?」

福太郎「んー、なんや最近よう居るんよ」

悠「そりゃまたなんで……」

福太郎「んー……関係あるかどうかは分からんけど、りんねさんが来てからやね」

悠「あぁ、死臭を嗅ぎつけてるのか」

福太郎「悠は酷いやっちゃなぁ」

悠「酷くないだろ。じゃあ、福ちゃんはどう思ってるんだ?」

福太郎「血肉の匂いがするってカラスたちは言いよったよ」

悠「って、本人……いや、本鳥に確認済みかい」

福太郎「たまたま聞こえただけやけどね」

悠「便利な奴め。こんどウチ来てくんない?」

福太郎「ええけど、なんで?」

悠「いや、是非我が飼い猫と犬の声を聞きたくて」

福太郎「余計なこと口走られるかもしれんのに勇気あるなぁ」

悠「確かにその可能性はあるが福ちゃんが空気を読んでオブラートに包むなりしてくれることを期待する」

福太郎「なんでもすぐに「空気読め」いうんは現代の悪習やと思うんやけど、その辺どうおもう?」

悠「全く同意見だわ」

福太郎「せやろ」

メリー「ご主人様はまだ普通だけど、アンタは本気で空気読めない人間なだけじゃない」

悠「そうかな?」

福太郎「んー……俺はそんなことないと思うで」

悠「福ちゃん、ウチ来ておれの片割れをファックしていいぞ」

福太郎「んー……ええわ。遠慮うする」

悠「欲がないなぁ」

福太郎「人並みにはあるで」

悠「マジで?」

福太郎「うん、例えば宝くじ当たったら豪遊したい」

悠「欲ってか夢だな。」

福太郎「あれ?」

悠「ところでさ」

福太郎「ん?とっくに将棋が詰んどるんは知っとるよ」

悠「いや、そうじゃなくて……福ちゃんてちゃんとウチ来たことあったっけ?」

福太郎「いや、無いよ。正味なはなし場所も知らん」

悠「だよね、じゃあ……今からうち来る?」

福太郎「めっちゃ急やな」

悠「思い立ったったが吉祥寺っていうだろ」

福太郎「吉日なら聞いたことあるけど」

悠「っで、どうする?おれは別にもっと将棋続けてもいいんだけど」

福太郎「今何敗したっけ?」

悠「後二回で通算五十回」

福太郎「悠、将棋強いな。名人目指したら?」

悠「いや、本物は……桁が違うからむりだべ」

福太郎「悠やったらのらりくらりと何にでもなれそうやけどな」

悠「なにそれ、口説いてんの?」

福太郎「ほんならあと二回して悠の家おじゃましょーかな。こっから近いん?」

悠「THE・スルー……まぁ、そこそこだよ」

福太郎「ということでクロ」

クロ「あー?」

福太郎「留守よろしゅうね」

クロ「あー……」

悠「なんだ、あのダラケっぷりは」

福太郎「暑さにまいっとるみたいなんよ」

悠「犬だからか」

福太郎「犬やからな」

クロ「犬じゃね~……」
29/100ページ
スキ